古民家宿の物語 日本全国リノベーション 129 秩父定峰清流キャンプ場 古民家ゲストハウス(上) コロナ禍が背中を押した再挑戦
住宅新報 2026年3月17日 号 11面

古民家宿の全景。グランピング施設の奥にある
最初は廃屋に愕然とした
敷地内には浅瀬の清流が流れ、川遊びや焚き火、季節ごとの自然体験が楽しめる。宿泊形態は、築年数を重ねた古民家を再生した一棟貸しタイプを中心に、テントサイトやバーベキューエリアも備える。単なる宿泊施設ではなく、「秩父の自然と暮らしを体感する拠点」という位置付けで運営されている点が特徴だ。
この施設が誕生する以前、当地は別の事業者がキャンプ場として開発を進めていたが、計画は途中で頓挫。建物は傾き、雨漏りも激しく、敷地は荒地と化していた。現オーナーが最初に現地を訪れた際、その荒廃ぶりに圧倒され、「自分の手には負えない」と一度は断念したという。
事業再構築補助金を活用
転機となったのは、その約1年後に訪れたコロナ禍である。市内で飲食店を営んでいたが、外出自粛と営業制限の影響で経営は大きく落ち込んだ。先行きの見えない状況のなか、国の事業再構築補助金を活用できる可能性が浮上する。三密を避けられる屋外型レジャーへの関心が高まり始めていた時期でもあり、「もともとやりたかったキャンプ場を、今こそ形にできるのではないか」と再び現地に。
土地建物は購入ではなく、地主との賃貸という形でスタートした。地主はこの家で生まれ育った人物で、荒れ果てた状態を憂いながらも「活用してもらえるならありがたい」と快諾したという。工事が始まると、地主が現場を訪れては「子どもの頃はここに沢が流れていた」「馬を柱につないでいた」と往時の情景を語った。単なる空き家活用ではなく、地域の記憶を未来へ引き継ぐ再生事業としての意味合いが、次第に色濃くなっていったのである。
異色の組み合わせ
コロナ禍という逆風のなかでの挑戦は、守りではなく攻めの選択だった。従業員を抱える立場として「やるしかない」という現実的判断もあったが、それ以上に「自然の中で人が集い、くつろげる場をつくりたい」という思いが背中を押した。こうして、古民家とキャンプ場という一見異色の組み合わせによる再生プロジェクトが本格的に動き出したのである。
住所=埼玉県秩父市定峰345
ウリ=キャンプ場との併設により、アウトドアも満喫できる






















