酒場遺産 ▶124 神田 樽平 吉野杉の樽で琥珀色の酒
住宅新報 2026年3月10日 号 17面
連載: 酒場遺産

2年ぶりの神田祭を堪能した後、友人たちと「神田樽平」で久しぶりに飲んだ。店の外では気勢を上げる人たちの声が聞こえる。「樽平」は山形県川西町にある「樽平酒造」の酒を供する店である。神田樽平の創業は大正末期から昭和初期に遡り、酒蔵直営店として運営されてきたという。神田の他に樽平の名を冠する店は新宿・銀座にあるが、銀座店は2017年に閉業、新宿店は系統が異なる兄弟店のようなものだという。暖簾を潜ると、店の中央にどっしりとした骨太のL字型木製カウンターが鎮座する。カウンターの中は比較的ゆったりとした板場となっており、店主や職人との適度な距離感が保たれている。1階はカウンター約10席、小上がりの畳席とテーブル席で約15席。2階にも座敷があるが、繁忙期以外は使われていないという。
「樽平」は、吉野杉の樽で熟成された琥珀色の酒。「住吉」は濃厚辛口、キレがあり酸がしっかりしている。「雪むかえ」純米大吟醸は上品な香りが特徴で、冷酒が美味しい。料理は、蔵元の故郷・山形の郷土料理が中心。芋煮(牛肉、里芋、こんにゃくを醤油ベースで煮込んだ山形のソウルフード)、玉こんにゃく(味が芯まで染み込んだプリプリの食感)、鯉のうま煮(泥臭さのない濃いめのタレ)、晩菊漬け(山形の菊の花や山菜の漬物)、刺身の盛り合わせ(かつての神田市場の伝統を引く、厚切りの魚介)、くさや、いかの塩辛(自家製の透き通った塩辛)など、酒飲みのツボを押さえた小皿が並ぶ。
本格的な良酒場だが、若い人たちには敷居が高く感じるのか、予約なしで行っても座れることが多い。神田でお薦めできる酒場のひとつだ。(似内志朗)






















