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社説 価格と家賃同時上昇期の課題 生活基盤守る使命果たせ

住宅新報 2026年3月10日 号 2面

連載: 社説「住宅新報の提言」

政策
社説 価格と家賃同時上昇期の課題 生活基盤守る使命果たせ

 住宅・不動産業界が新たな課題に直面している。今のように都市部の住宅価格と家賃が同時に上昇する局面は、これまで長く続いたデフレ期には見られなかった現象だ。2000年代初めのミニバブルやアベノミクスによる資産インフレ期には、東京を中心に不動産価格が上昇したが、それでも「価格上昇・家賃横ばい」が常態化していた。

 家賃は生活費に直結するものであり、国民もそれが当然のことと受け止めていた節がある。しかし今、金利上昇、建設費高騰、円安による物価上昇で家賃も当然のように上がり始めた。家主も物価上昇分を家賃に転嫁できなければ経営が苦しくなるからだ。

 そのため、今は多くの国民が分譲マンションの購入を諦めざるを得なくなっただけでなく、家主側からの家賃の値上げ交渉という苦難に直面している。こうした状況下で住宅・不動産業界が果たすべきことは何か。それは生活の基盤である住まいの安定供給であり、業界最大の使命と言っていい。

 そこで第1に求められるのは、家賃値上げ交渉を受けている賃貸住宅入居者に対する「丁寧な説明」だ。賃料改定や更新条件など契約期間中の家賃変動ルールについて改めて分かりやすく説明する必要がある。

 第2は管理会社の立場として、要求する上昇幅に見合う価値向上を大家側に求めることだ。単に「物価が上昇しているから」という説明では入居者としても受け入れがたく、感情的対立に発展する可能性がある。そこで、設備の更新といった住まいの質向上を通じた負担の正当化だ。単なる価格転嫁ではなく、住み心地と安全性を高める投資を促すことに事業者としての存在意義がある。

 第3は住宅弱者への目配りだ。高齢単身者や子育て世帯、外国人就労者には特に丁寧な対応が求められる。居住支援協議会や自治体の福祉相談窓口などとの連携を強化し、セーフティネット住宅を紹介するなどの努力も必要である。

 最後は、分譲・賃貸を超えた生涯支援型ビジネスへの移行だ。売ったら終わり、貸したら終わりではなく、リフォームや住み替え、相続まで伴走するモデルへと転換していく。これは資本・人材が豊富な大手には強く求めたい。マンションの老朽化問題が示すように、住まいは時間とともにリスクを抱える可能性がある。ライフサイクル全体に責任を持つ業への転換こそ、生活基盤である住まいを担う事業者としての責務だろう。もちろん企業は慈善団体ではない。適正な収益がなければ持続的な供給は不可能だ。しかし、社会インフラという公共財でもある住まいという商品の特殊性を忘れ、市場原理だけに委ねてしまうと社会の分断に手を貸すだけとなるだろう。公益を意識した規律があってこそ、不動産業界は社会の信頼を得ることができる。

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