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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇215 価格ではなく価値の時代 関口能子氏が講演 普遍性と個性の融合

住宅新報 2026年3月3日 号 11面

連載: 彼方の空

総合
  • 彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇215 価格ではなく価値の時代 関口能子氏が講演 普遍性と個性の融合

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  • 関口能子(せきぐち・よしこ)=分譲マンション管理組合のコミュニティアドバイザーとしてキャリアをスタート。不動産開発会社にて分譲地の企画・広報を担当。その後、生活総合支援企業を経て、2019年に一般社団法人ライフリンクデザイン研究所を設立。住環境を軸にマンション管理支援、定期借地権活用、人材育成などの業務を展開中。現在、一般社団法人全国定期借地借家協会理事・事務局長。25年より株式会社ライフリンクサポートの代表取締役。

    2 / 2関口能子(せきぐち・よしこ)=分譲マンション管理組合のコミュニティアドバイザーとしてキャリアをスタート。不動産開発会社にて分譲地の企画・広報を担当。その後、生活総合支援企業を経て、2019年に一般社団法人ライフリンクデザイン研究所を設立。住環境を軸にマンション管理支援、定期借地権活用、人材育成などの業務を展開中。現在、一般社団法人全国定期借地借家協会理事・事務局長。25年より株式会社ライフリンクサポートの代表取締役。

最後の富

 「量から質へ」「ハードからソフトへ」「モノからコトへ」そして今起きている住宅市場最後の潮流が「価格から価値へ」である。「失われた30年」の長く続いたデフレ期には住宅価格の上昇それ自体が話題となった。だが近年、建築費や人件費高騰を背景に分譲価格が際限なく上昇し始め、一時的な価格自体にはあまり意味がなくなりつつある。購入者の関心事は〝今〇〇億円〟という価格を付けている物件がこの先、いつまでその価値を維持し続けるのかという「資産価値保全力」に移りつつある。

 東京の一極集中があと何年続くのか、あるいは永遠かは不明だが、富裕層は永遠の価値をもつ不動産を手に入れることに力を注ぎ始めたようだ。定期借地権マンションが所有権と変わらない価格でも(あるいはそれ以上でも)買われているのもそのためで「所有権では決して出てこない超一等地の魅力」に引き付けられている。

 借地期間が終了すれば土地を返還しなければならない定借マンションはそれこそ「資産価値保全力」がないのではないかという見方もあるが、近年の定期借地権マンションの借地期間はなんと70年余という長さだ。めったに手に入らない一等地に住む価値は富裕層としては「○○億円×70倍」の価値があるという感覚だと思う。さすがの東京も超一等地と言える土地はもうそれほど残ってはいない。東京の最後の富を誰が手に入れるのかという争奪戦が始まった感がする。

住まいの2面性

 住まいには2つの価値がある。それが「資産価値」と「暮らす価値」である。暮らす価値の尺度は楽しさだ。「楽しさ」は分譲価格や家賃の高さに必ずしも比例しない。むしろ住む人の感性との相性に比例する。楽しいという感情を生み出す源は人間の感性だからである。問題は住まいの資産価値と暮らす価値が整合性を欠くことである。なぜなら、暮らす価値の尺度である楽しさの基準は人それぞれで個性的だが、資産価値はほぼ普遍的だし普遍的でなければならないからだ。

 そうした中、2月20日に行われた沖縄定借機構(速水英雄理事長)のオンラインセミナーに登壇した一般社団法人ライフリンクデザイン研究所代表理事の関口能子氏は「住宅は住みながら資産価値を育てる時代へ」と題した講演を行った。「住宅は売って(買って)終わりではなく、住み始めたときからいかにその資産価値を継続していくかが鍵となる時代になった」と語る。その具体的なポイントとして関口氏は「立地(希少な土地柄)」「利便性を増す新たな設備の導入」「管理(人によるサービス)」の3要素を挙げた。

 立地はその良好な土地柄(環境)を守り続けること、設備は時代の変化に応じて更新されていくもの、管理は結局人を介したサービスに落ち着くといった点を指摘した。つまり、暮らす価値の尺度となる楽しさ(個性)も普遍性を土台とするものでなければならず、その矩を超えなければ「価値を継続していく」ことにつながるということではないか。

2極化する市場

 「価格から価値へ」の移行は市場の二極化でもある。全ての物件が将来に渡って値上がりする時代は終わり、その価値の継続性を説明できる物件だけが支持される時代に入った。関口氏はそのキャリアから立地、機能、管理、コミュニティといった複合的な要素が統合されて初めて住まいはその価値を継続することができると看破する。

 「価格から価値へ」とは住宅市場が文化的成熟期へ移行する過程でもある。業界に求められるのは一時的な販売で終わるのではなく、時間とともに価値を育てるという視点だ。価格はやがて調整されることがあっても、住まいとしての真の価値は残る。そこを峻別する眼がユーザーにも求められている。

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