古民家宿の物語 日本全国リノベーション 128 小川まちやど (下) 運営の工夫と「地域インフラ」として
住宅新報 2026年3月3日 号 11面

暮らすような宿泊
宿泊者の多くは、いわゆる観光客ではない。登山や農業体験への参加者、町内イベントの来訪者、親族・友人を訪ねる人、地元住民の来客対応など、明確な目的を持った「滞在型利用」が中心だ。観光地化されていない小川町の特性が、客層に表れている。
運営面で特徴的なのが、宿泊機能を町と分散的に接続している点である。チェックインは観光案内所やコワーキング施設と連携し、鍵の受け渡しや町の案内をそこで行う仕組みを採用している。宿だけで完結させず、町の施設を介在させることで、宿泊者が自然と町に触れる導線をつくる。
単体運営では難しかった安定性が、ネットワーク化によって確保されてきた。なかでも三姉妹はリピーター比率が高い。「実家のように落ち着く」「暮らす感覚で使える」といった声が多く、親族訪問時の滞在先として地元住民に利用されるケースも増えている。一方、ツキは「宿そのものを目的に訪れる」利用者が目立ち、町外からの新規客の入口としての役割を担う。
ニーズにあった深掘り
今後の展望として描いているのは、二つの方向性だ。一つは、古民家宿である三姉妹やジットハウスを、リピーター中心の会員制的な運営へと移行させること。彼らは古民家特有の寒さや建具の癖を理解し、宿を「育てる」視点を共有できる。宿泊者との関係構築を重視していく方向だ。
もう一つは、古民家宿ツキを軸とした体験型宿泊の深化である。和紙づくりや農業体験、地酒、地域食文化など、小川町に点在する資源を宿泊と組み合わせ、「泊まるだけではない滞在価値」を明確に打ち出す構想だ。地域体験と一体化した宿泊モデルへの転換を視野に入れている。
地域との結節点を目指す
「宿を使ってもらうこと」が最終目的ではない。宿を入口に町を知り、関係を持ち、再訪につながる流れをつくること。そのための装置である。
三つの宿を束ねる「小川まちやど」は、観光施設でも単なる民泊でもない。地域の暮らしと外部の人を緩やかにつなぐ、生活インフラとしての宿泊モデルが、ここ小川町で静かに定着しつつある。
住所=埼玉県比企郡小川町大塚
ウリ=小川町を夜まで満喫でき、日常を体験






















