大言小語 〝幸せな老後〟とは
住宅新報 2026年3月3日 号 1面
連載: 大言小語

いよいよ80代を迎えた子供のいない伯母から何かと相談を受けるようになった。数年前に大腿骨を骨折した影響で足はいくらか不自由なものの、好奇心旺盛で活動的な性分は変わらず、昨年は8月の猛暑の最中、大阪・関西万博へ友人と出掛け、外野の心配をよそに「(1970年の大阪万博との)2度の万博は楽しかった」と大いに満喫した模様。こちらがうらやましくなるバイタリティだ。
▼そんな伯母は当然ながら友人も多く、様々な情報にも事欠かない。だが、住み替えや相続といった〝老後〟の備えや終活については、周囲からアドバイスなどがあるものの、〝何の考えもないが家からは離れたくない〟らしい伯父との意見のすり合わせもままならないという。ただし、話をよくよく聞くと、「家を離れたくない」のは、伯父だけではないようだ。
▼高齢化に伴い、家事や階段の乗降の負担が増すにつれ、2階建ての戸建て住宅での生活はQOL(生活の質)を下げる要因になるともいわれている。伯母の場合、足のこともあり、自宅の階段で事故になる可能性は否めない。火を使う暖房器具やキッチンコンロなども、〝遠ざけられたらなお安心〟というのが偽らざる本音だ。
▼一方、〝梅仕事〟に勤しみ、柚子胡椒に黒ニンニクも手作りするなど、生き甲斐と台所が直結している伯母は、多少不便でも〝自宅で全うする人生〟こそが本望なのだろう。






















