酒場遺産 ▶121 気仙沼 みしおね横丁 港町の今を象徴する光景
住宅新報 2026年2月17日 号 11面
連載: 酒場遺産

「みしおね横丁」は、震災により失われかけたこの町の記憶を継承しようと、奔走してきた人々の思いが凝縮された場である。古い酒場を旨とする「酒場遺産」には当たらないが、ご容赦いただきたい。
昨夏、気仙沼を旅した。土地一面を覆っていた漂流物が自衛隊の尽力で片づけられ、ようやく車が通れるようになった2011年5月の視察以来だった。
15年近くが経ち、復興は着実に進んだ。海岸近い土地は津波で流され更地となったが、そこに人々の心のよりどころをつくろうと、19年7月トレーラーハウスを改装した「みしおね横丁」が生まれた。「被災地の復興と漁港・魚市場で働く漁師や港町の働き手を支える」、そんな強い思いが込められたという。壁には「NO YOKOCHO, NO LIFE.(横丁がないと人は生きていけぬ)」とある。まさにその通りだ。横丁には7つの店が入る。鶴亀の湯(銭湯)、鶴亀食堂(朝ごはん・定食)、PRISM(カフェ&バー)、TEN(T)(沖縄料理)、ワルンマハール(インドネシア料理)、Cheers(テキサス×メキシカン料理)、豚野郎(ラーメン)である。
銭湯「鶴亀の湯」は、被災し休業した旧「亀の湯」を惜しみ、住民有志がクラウドファンディングで再建したという。漁師たちは市場に向かう前に、ここでひと風呂浴びて出かけるのだとか。気仙沼漁港には大型漁船がぎっしりと並ぶが、船員の多くは外国籍、とりわけインドネシアの人が多い。そのため、インドネシア料理店や礼拝所が自然と横丁に組み込まれた。港町の今を象徴する光景だ。町をぶらついたのち、夕刻にバーPRISMを訪れた。スタンダードカクテル、シングルモルト、ワイン、クラフトジン、クラフトビールなどが壁一面に並ぶ。地元・男山酒造の「蒼天伝」のモヒートも名物らしい。店内20席、心地よい屋外テラスには約30席。夜が深まるにつれ、この町のさまざまな人々が集まる。 (似内志朗)






















