彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇212 「教養」としての不動産 齊藤広子教授が講演 不動産女性塾にて
住宅新報 2026年2月10日 号 19面
連載: 彼方の空
横浜市立大学国際教養学部教授の齊藤広子氏は「教養」としての不動産を教えている。学生たちは主に社会インフラとしての住まいの大切さを学び、空き家再生プロジェクトでは物件探しやDIYなどに汗を流す。齊藤氏は「〝住まいのイノベーションを起こす〟ことがこれからの不動産業の使命であり、優秀な学生を取り込む手段になる」と話す。(以下は1月27日に明治記念館で開かれた第49回不動産女性塾<新春>セミナーでの講演より)
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――教室から飛び出し、自ら住宅地の開発にも取り組んでいる。
「大学の先生は偉そうなことばかりしゃべっているけど、実際にはなにもできないのではと思われている。その認識を覆したかった」
――先生がプロデュースし、19年に都市景観大賞優秀賞を受賞した「リビオ姫路大津のぞみ野地区」(兵庫県姫路市)の街づくりには常識を覆す8つの発想転換があるとか。
「道で遊んではいけない、各家は自由に建てるもの、道路はまっすぐでアスファルト、道に電柱は当たり前――などだが、最大のポイントは戸建て住宅街にマネージメント(管理)の仕組みをつくったことだ。戸建て住宅地に管理人はいないという常識を覆して駐在するコミュニティーマネジャーが街の巡回や様々なイベントなど住民間の交流を支援する仕事をしている」
――15年4月に横浜市大に移籍されてからは空き家問題にも熱心に取り組んでいる。
「着任早々、産官学連携での空き家利活用プロジェクトが始まった。第1弾は学生たちが地域を歩いて空き家を探すところから始まった。物件の現地実測、企画・計画、プラン策定、改修、入居者募集と作業を進め、最終的に国際交流シェアハウスとなって大成功した。成功事例が出ると、空き家は探さなくても向こうからやってくることも分かった」
――空き家を再生するのに学生たちのDIYの力が大きく寄与しているとか。
「建築の学生を巻き込んだり、地元の電気屋さんに頼み込んだりして、どんどん進めていく。私が電気屋さんに頼めば『おいくらで』ということになる」(笑)
――若い力、純粋な熱意が地域の協力を引き出すと。
「少子高齢化、人口・世帯数少、単身世帯の増加など、不動産業を取り巻く環境が大きく変化したこと。これからの住宅・不動産業は生活のサポート(管理)、空き家問題解消(賃貸活用)、高齢者の居住問題(流通)というように今までとは異なる課題に取り組んでいく必要があるが、そこは若い力が欠かせない」
――高齢者の居住問題は施設を増やすことだけで解決できるとは思えない。
「今、日本は大きな転換期にある。行政支援を当てにするのではなく、女性の視点、暮らし目線を中心にした民間賃貸住宅の管理サービスこそ重要だ。昔の住宅公団の賃貸には連絡員やヘルパーが常駐していた」
――住宅弱者の問題をどう考えるか。
「イギリスではナイチンゲールよりも有名な女性がいた。オクタビア・ヒル女史(1838~1912年)で、ナショナルトラスト運動(無秩序な開発から自然や歴史的環境を守る市民運動)で有名だが、本当は住宅管理の母と呼ばれている」
――というのは。
「たった3件の借家から始めた事業をイギリスの公営住宅管理の仕組みまでに発展させた人物。家賃を払えないという人がいると、みずから出向いていって、部屋の中を見る。その人がどういう暮らしをしていて、どういう助けを求めているのかを見抜くためだ。今の賃貸住宅管理に求められているものはそういうことだ」
――社会が求めていることに不動産業界はなにができるかが重要だと。
「豊かな暮らしのために人を育てて、暮らしを支える。成熟社会だからこそ、新たな価値、方法にチャレンジしなければならない」
























