酒場遺産 ▶120 湯島 赤提灯 庶民的な「迎賓館」
住宅新報 2026年2月10日 号 19面
連載: 酒場遺産

湯島は多様なところだ。本郷に続く住宅地や湯島天神のある高台の土地、そして上野広小路・御徒町へと続く低地の繁華街に分かれる。その高低差は建物の3~4階分ほどあり、2つのエリアは急な坂や階段で結ばれている。そして魅力的な酒場が密集しているのは、もちろん低地の方である。老舗の飲食店が並び、ディープな酒場や風俗店なども多い。「赤提灯」は創業昭和24(1949)年なので、今年で創業76年ということになる。当初は名店「シンスケ」のある場所で営業を始めたが、その後、昭和31(1956)年に現在の場所(池之端会館1階)へ移転したという。昭和47年には本連載第7話でも取り上げた名店「岩手屋支店」を開き、この2軒の店を4人の兄弟で切り盛りしてきたという。
この3年ほど、筆者はAIスタートアップ・ビルメン会社・某IT企業OBからなる10人のプロジェクトチームで、湯島から程近い外神田の会議室を借り、月一のミーティングを行っている。年長のUさんが「湯島の迎賓館」で忘年会をしましょう、と連れてこられたのがこの店だった。1人3000円もあれば十分な随分と庶民的な「迎賓館」だ(笑)。暖簾をくぐり引き戸を開ければ、土間に長いテーブル席が何台も並ぶ。ここは一人客が多く、グループ客は奥の広い座敷に通される。長いテーブルがいくつも並び、大人数でも席が自在に取れる。壁にずらりと貼られた無数のメニューの短冊は壮観だ。人気はもつ焼きともつ煮込みだ。もつ煮込みは「創業以来、変わらぬ味を守り続けて42年。一度食べたらやめられない味!」とある。ビール大瓶は税抜490円。焼酎・酎ハイ・日本酒なども300~420円、料理も串焼き140円、小皿料理は酢の物、揚げ物、納豆料理、刺身類、サラダ類など300~500円程度と安い。明るく健全な下町酒場は日常づかいにはもってこいだ。以来、度々訪れている。(似内志朗)






















