大言小語 断言しない時代
住宅新報 2026年2月10日 号 1面
連載: 大言小語

最近、誰も断言しなくなった。会議でも記事でも、「~と考えられる」「可能性がある」等の言い回しが目立つ。働き方やキャリアの話題なら、なおさらだ。生成AI、リスキリング、副業、管理職のあり方。重要なテーマばかりだが、言い切る人は少ない。断言すると頼もしく見えるどころか、少し浮いてしまう空気すらある。
▼これは、誰もが臆病になったからというより、確信を持てる材料が減ったからだろう。変化が速く、前提は崩れやすい。昨日までの成功事例は、今日には参考程度にしかならない。かつては「この会社でこの道を歩めばいい」「このスキルを身につければ安心」といった、分かりやすいキャリアの定型文があった。今は、それを語った瞬間に古くなる。
▼働き方改革も人的資本経営も、方向としては正しい。だが、どれも万能ではないことを現場は知っている。ある大学教授は「これから必要なのは、資格よりも時代を読む力、つまりマインドだ」と語っていた。先を見通せないからこそ、事象を読み解き、整理し、自分なりの哲学を持てるかが問われるという。
▼背景には、社会全体として進む方向が見えにくくなっている現実がある。だから個人も組織も語尾を強められない。断言しない時代のキャリア思想は「答え」より「仮説」を更新し続けることに重心がある。言い切れない空気の中にこそ、この時代の働き方とキャリアの本音が映っている。






















