新年特集 成長へ新たな選択肢 持続可能性を追う 見守り賃貸の現在地 「気づき」と「つなぎ」を標準機能に
住宅新報 2026年1月6日 号 22面
運用で実装する〝第三の受け方〟
高齢者の賃貸需要は増えているが、孤独死や滞納、認知症、残置物への不安から受け入れをためらう貸し手は少なくない。体制があいまいなままだと発見が遅れ、原状回復や残置物処理、未回収家賃が一度に顕在化し得る。2026年3月の閣議決定を目指す次期住生活基本計画が「気づき」「つなぎ」を重視するのは、この現場感に応答する意図と読める。
従来の二択は、「断る」あるいは「善意で受ける」。前者は空室長期化の懸念、後者は属人的で事故時の説明が割れやすい。そこで、募集・契約・運用・事後を前倒しで決めておく「標準装備として受ける」を第三の道として置く。属人性を減らし、再現性を高める考え方だ。
「年齢を理由に家が借りられないを解消する不動産会社」を掲げるR65(東京都港区、山本遼代表取締役)は、(1)高齢者「入居可」の見える化、(2)体に触れず負担の少ない見守り(生活リズムの変化を手がかり)、(3)残置物・死後事務の第三者受任(契約条項で事前合意)、(4)保証の活用――を一体のパッケージとして提示している。これにより、「断る」から「備えて貸す」へ判断を促す効果が期待できるとの説明・手応えがある。もっとも、具体の運用と書式は各社の規約・地域の取り扱いに合わせた調整が前提だ。R65の内規を断定する趣旨ではなく、現場に落とす参考例として位置づける。
三要点で〝備える〟
標準装備の骨格は、第一に、見守りは体に触れず負担の少ない方法を基本にすること。常時カメラは心理負担や合意形成のハードルが高い。電力使用量や通信機器の稼働など生活リズムの変化を手がかりにし、検知→連絡→確認→必要時訪問までを手順書として明文化する。
第二に、表示と同意を前段で確保する。募集情報に「見守り付き」「居住サポート対応」を明示し、入居時にデータの扱い(取得・保存・共有範囲)と通報先への同意を書面または電磁的に得る。通知の受け手・連絡先・現地確認の判断と時点は、契約付属書や運用規程に記す。
第三に、事後条項は平時に合意する。残置物の扱い、死後事務の受任、保証・保険の適用範囲を事前に取り決め、鍵管理・立ち会い・写真記録・原状回復の範囲と単価・連絡線まで条項と様式で押さえ、証跡を残す。保険金の支払いに時間を要し得ることも踏まえ、早く気づける仕組みと費用平準化(保証・保険)を併せて整える。
運用に落とす
今日から始める手順は次の通りだ。第一歩は、書式と画面の整備だ。募集票に見守りの有無・概要・費用・連絡線を記載し、契約書に同意条項(データの扱い・通報先・共有範囲)と事後条項(残置物・死後事務・保証・保険)を設け、連絡フロー図を添付する。入居時面談では緊急連絡先の確認と、夜間連絡の扱いなど生活ルールを共有する。
日々の運用は、時間と記録を基準化するだけでも効果がある。例えば、一次確認は当日中、本確認は24~48時間以内といった社内目安を台帳に明記し、日時・手段・結果を記録する(制度上の義務ではなく各社が定め得る運用例)。迷った事例は月1回の定期レビュー等で共有し、誤報抑制と対応時間短縮につなげる。事後は平時に合意した手順に沿って、残置物は写真→見積もり→処理、原状回復は範囲・単価の事前合意に基づき発注。保険・保証は連絡要件と提出書類をリスト化しておけば、担当交代時も滞りにくい。
孤独死レポートの示唆
日本少額短期保険協会の「孤独死現状レポート」は、孤独死保険の支払い関連データを集計した二次資料で、賃貸住居内の孤独死に伴う費用傾向の把握に参考となる。発見の遅れと費用増加が相関しやすい傾向が示され、残置物処理・原状回復・家賃補填の負担は時間経過と共に増えやすい。早期発見の確率を上げるには、親族だけに依存せず、福祉職や配達員など日常接点の気づきと、電力データなど身体に触れないサイン(=カメラに頼らない兆し)を併用する。もっとも、具体数値や効果量は物件特性や地域差の影響を受けるため、導入前に自社の実績・地域データで検証し、目安と手順を適宜見直すのが妥当だ。
場と規格で続ける
場を広げることも重要だ。住戸の内外に「気づく場所」を点在させる発想は、運用の継続性を高めやすい。団地や公的賃貸の空き住戸・共用部を相談・巡回・通報の拠点として活用し、週に数コマの常駐を設ける。市区町村の居住支援協議会は、承諾書・通報フロー・記録台帳のテンプレートを採択・更新する場として使える。事業者が替わっても運用が崩れにくい「場」と「規格」を整えることは、実務者にとって安全装置として機能しやすい。
結びとして、改めて確認したいのは(1)体に触れず負担の少ない見守り、(2)前倒しの表示・同意、(3)事後条項の平時合意だ。この三点を文書で前提化し、社内規程や協議会の合意として明文化すれば、「第三の受け方」は小さく始められる。大規模投資を前提とせず、段階的に整備・検証していく道が現実的である。

























