酒場遺産 ▶116 巣鴨 鳥晶 素材の特性に合わせ焼き上げる
住宅新報 2026年1月6日 号 15面
連載: 酒場遺産

ある夏の日曜夜に、巣鴨「鳥晶」を訪れた。駅北口から歩いて数分の、古い2階建て長屋の一番右の間口の狭い店だ。まだ8時というのに店主が暖簾を下ろしているところだった。「夜11時閉店とありましたが」と聞くと、「申し訳ないね。日曜は早い時間からやっているんで、もう鳥が切れてちゃったんだ」と言う。次の金曜夜に再チャレンジ、まだ明るい6時に行ったが既に満席。30分ほどぶらついて再び来たら、右手のカウンターの奥を空けて座らせてくれた。店は狭く10席ほどのカウンター、左手に2人掛けのテーブル席が3つ並ぶ。創業16年というから歴史の古い巣鴨では新しい部類に入るが、2008年に開業し「瞬く間に地域に溶け込み、愛される店となった」という。
今では居酒屋好きの間では有名な焼き鳥店だ。店主の木下智晶さんの素材と焼きへのこだわりは強い。鶏肉は山梨産阿久津「紅ふじ鶏」、野菜は一寸法師ミニトマト(甘みが強い)、青森産のにんにくなど、厳選された素材が使用されている。「素材を生かすも殺すも焼き方次第」、強火でサッと焼くもの、弱火でじっくり焼くものなど、素材の特性に合わせ丁寧に焼き上げるという。
生ビールで喉を潤した後、店の人に「ちょっと甘口ですが」と薦められた京都「白木久」。少し濁って濃厚な味が気に入った。 そして鳥が美味い。まず頼んだのはハツ。「現在ハツ入手困難のため、申し訳ありませんが、お1人様につき1本の注文とさせていただきます」との注意書きある。これが絶品。飯田橋「鳥政」といい勝負だった。次に、ねっく、ふりそでを頼んだが、これもハツに劣らぬ美味さ。人気の品は次々に売り切れ、メニューは赤い線で消される。
11時閉店とあるが実際は10時ごろ閉店、日曜は8時に売り切れる。その他一品料理のキャベツサラダ、とりわさ、レバーたたき、長芋の千切り、もも炙りたたき、鳥皮ポン酢なども人気だ。気さくな店主と言葉を交わしながら、焼き鳥とビールを楽しむ時間は最高だ。(似内志朗)






















