彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇206 住宅政策の最終目標 幸福の謎を解く 住まいという暮らし
住宅新報 2025年12月23日 号 11面
連載: 彼方の空
スーモ編集長の池本洋一氏は11月25日に行った不動産女性塾での講演で「我が国の住宅政策は25年サイクルで変遷してきている」との見解を示した。1950~1975年は住宅の数の充足、75~2000年は広さの確保、00~25年は新築の品質担保とストック活用。そしてこれからの四半世紀(50年頃まで)は「人口減と高齢化」「単身化」「脱炭素」「災害対応」という4つの課題に対処していかなければならないという。 ただ、課題はもう一つあって「住まいと幸福との関係」を究明すること。筆者はそれこそが住宅政策の最終目標と考える。なぜなら、日本人はあまりに安易に「住まいを持てば幸福になれる」と考えているからだ。
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戦後、住宅難解消から始まった我が国の住宅政策は1973年に全都道府県で住宅総数が世帯数を上回り、2003年には全世帯の約半分が誘導居住水準(1人25m2)に達するという目標に達した。そして06年にはそれまでの住宅建設計画に代わる住生活基本計画を策定。量の確保というハード的思考から脱却し、心を充たす豊かな住生活とは何かというソフト的課題に住宅政策の方向を大きく転換したのである。しかし、その成果はあまり上がっていない。
計画期間は10年
住生活基本計画は「住生活基本法」(06年6月施行)に基づき、国民の住生活の安定・向上を図る基本的政策指針として策定された。計画期間は10年で、おおむね5年ごとに見直し・変更を行うこととされている。これまでも11年、16年、21年と改定を重ねてきた。人口減少・少子高齢化、既存住宅ストックの活用促進など時代の変化に対応するためだ。
ただ、そこには人間の住生活において永遠に変わらない真実はなにかという視点がない。住まいがもたらす心の安寧、住まいと幸福との関係、そもそも幸福とは何かという深い思考がなければ住宅政策の真の目的を達成することはできないのではないか。日本人の多くが住宅を購入する動機として「家族を幸せにするため」と語るが、ハードとしての住宅を購入することが、どうしてソフトである幸福につながるのか――その筋道を明らかにしない限り日本人は幸せになれない。だから住宅政策にはその筋道を示す使命がある。
そのためには住宅をソフトとしてとらえる思考が必要だ。住まいにおける〝暮らしの質〟とは何かを明らかにしなければならない。それは暮らしが住み手の心にもたらす充足感である。その充足感=幸福が何によってもたらされるかといえば、家族との語らい、自然とのふれあい、子供との戯れ、近隣家族との交流など日常の何気ないことがらである。それらはもはや住宅政策の対象ではないと言われるかもしれない。しかし日常の出来事がもたらす幸福と住まいとの関係を解き明かさないかぎり、国民の幸福を願う住宅政策とは言えないと思う。
26年春に策定
戦後の高度経済成長と急速な都市化がもたらした物質的豊かさ、効率主義の中で日本人は人間の暮らしにとって真に大切なものを見失ったのではないか。幸福とは物質的豊かさでもなく、機能性や利便性とも無縁であることは十分承知しながらも、肝心の幸福そのものの正体について考えることをしてこなかったし、今もしていない。
暮らしにとって最も大切なもの、それは「暮らしの質」であり、その質を感じ取る感性を育むことにほかならない。人間の感性は住まいが醸し出す一種の〝風合い〟の中から生まれてくる。住み手の感性を育む住まいづくりこそ、住む人を幸福にする。この幸福と住まいとの関係を理解することが重要だ。
26年春には次期住生活基本計画が策定される。そこに住まいづくりに対する新たな示唆が示されることを期待する。
























