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酒場遺産 ▶114 新橋 お多幸新橋店 70年以上継ぎ足す醤油風味

住宅新報 2025年12月16日 号 15面

連載: 酒場遺産

総合
酒場遺産 ▶114 新橋 お多幸新橋店 70年以上継ぎ足す醤油風味

 冬はおでんだ。凍える夜に熱燗を傾けつつ、おでんをつまむ幸福は何にも代えがたい。本連載22話では筆者の家から近い「お多幸神田店」を取り上げた。大好きな店のひとつだ。

 今回は「お多幸新橋店」。昭和7創業(1932年)、あと7年で創業100年である。「お多幸」はそれぞれ個性があり、これまで神田・銀座・日本橋と歩いた。昨年の師走に新橋店へ気の置けない仲間たちと初めて行ったが、関東風の濃い味おでんと日本酒三昧で大満足な会となった。新橋駅西口、新橋三丁目交差点近くのビルの地下1階にあり、老舗の風格漂う室内で、キャパはカウンター席とテーブル席で30人程度だろうか。

 少し前に書かれたと思われる三代目店主柿野幹成氏の挨拶文を見つけた。「私の祖父、柿野光春が銀座にあったお多幸本店より暖簾分けをして、今年11月で90年になります。2代目の柿野守彦が病弱であったため、25歳でサラリーマンを辞め、新橋お多幸を継ぐことを決意しました。その後、38歳で守彦から社長を継ぎ18年が経ちました。(中略)関東風おでんを後世に伝え、少しでも多くのお客様に当店のおでんを食べていただき幸せな気持ちになっていただきたいと願っております」とある。色の濃い関東風おでんだが、「お多幸新橋店」ではその黒さが際立っている。醤油風味の濃口で、旨みの強い鯖節と日高昆布を使い、70年以上継ぎ足しているという。

 壁に木の短冊メニューが掛かっている。牛すじ、ねぎま、いいだこ、つぶ貝、さつまあげ、キャベツ巻き、半ぺん、さといも、こまつな、つみれ、だいこん、しらたき、すじ、こんぶ、じゃがいも、ちくわぶ、ちくわ、あつあげ、たまご、がんもどき、こんにゃく、とうふ・・、250円から550円だ。豆腐は日本橋「双葉商店」、練り物は日本橋「神茂」、蒟蒻は上野「大原本店」など、創業時より厳選した素材を使っているという。おでんの他、とうめし(おでんの豆腐が乗ったご飯)、揚げ物、焼き物など豊富である。酒は、麦酒、焼酎、ハイボール、そして日本酒は菊正宗がメインだが、八海山大吟醸、南部美人特別純米、獺祭純米大吟醸45、飛龍純米大吟醸、百十郎純米、鶴齢純米吟醸など地酒も揃う。寒い季節が待ち遠しい。(似内志朗)

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