彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇205 不動産仲介業は何色? 一色ではない魅力 若い価値観を吸収
住宅新報 2025年12月16日 号 15面
連載: 彼方の空
労働人口の減少でこれから各産業間の人材確保競争が本格化する。AIやチャットロボットの進化で人間の頭脳よりも熟練の手や足を必要とする労働の必要性が高まり、ホワイトカラー(知識・管理系)よりも現場のブルーワーカーやエッセンシャルワーカーの賃金が高くなるという説もある。では、不動産仲介業は何色だろうか。
◇ ◇
一般的にはホワイトカラーに属されると見られているが(法律知識、重説の説明、顧客対応など)、現場確認や物件案内など外での仕事が多いという意味ではブルーワーカーの要素もある。更にはクレーム処理や苦情相談、住宅弱者への対応などエッセンシャルワーカー的な側面も併せ持つ不思議な職業である。ゆえに今のところ、AIに取って代わられる心配はないが、DX(デジタルトランスフォーメーション)などホワイト部分の効率化ばかりに力を入れ、現場での人間力をおろそかにしていると危ない。
一方、これからの若い労働力となるミレニアル世代(Y世代)やZ世代は働くことにどのような価値観を抱いているのだろうか。いくつかの調査結果を要約すると――。
「残業やハラスメントがない職場で気持ちよく働けて、スキルやキャリアを積むことができ、社会に貢献出来ているという実感がもて、それなりの報酬ももらえる」ということらしい。賃金が高いなど、どれか一つが基準となるのではなく〝総合的満足度〟を重視する傾向にあるという。古い世代なら「なにをとぼけたことを。そんな都合のいい仕事があるものか」と言いたいところだろうが、雇う側の企業としては時代の変化、若い世代の価値観を受け入れるしかない。
ただ、よく考えてみると、不動産仲介業はそうした若い世代の価値観をかなえることができる数少ない職種ではないか。知識が求められるホワイト部分も、現場経験がスキルにつながるブルー部分も、人から感謝されるエッセンシャル的側面も兼ねた総合職だからである。あとは〝相応の報酬〟が払えるかだが。
ヒトは資源
人件費をコストと捉えてしまうとどうしても抑制する方向に思考が向く。そうではなく、労働人口が減少していくこれからの時代は、企業にとってヒトは「貴重な資源」と捉えるべきである。
「ヒトが資源」ということは、個々人の個性や能力を生かすということである。個々の能力を伸ばしつつ、その働きに応じた賃金を払うためには、その働きに応じた媒介報酬を顧客から受領できるようにしなければならない。筆者の持論でもある〝媒介報酬の自由化〟が今こそ必要となっている。現行のように媒介報酬規程の上限を原則とする〝仲介手数料〟はもう時代遅れと言わざるを得ない。
受け取る報酬の上限が決まっていれば、提供するサービスの量も質も制限される。あとは業務を効率化して利幅を大きくするしかない。それで多様化している顧客(依頼者)のニーズに応えることができるだろうか。個々の依頼者に寄り添い、その利益を最大化する専門家(宅建士)としての責務を果たし、依頼者から感謝され崇められる業界に発展させていくことが出来るだろうか。これからの若い世代があこがれて参入してくる業界になるだろうか。
◇ ◇
これからの企業は雇う社員に対してだけでなく、顧客に対する意識変革も求められる。そこで、まず経済界全体が〝消費者〟という言い方をやめるべきだ。「個人消費」という表現は許されても「消費者」という言葉は人間に対するデリカシーを欠いている。
商品やサービスを一時的に購入する不特定多数の人々は「カスタマー」であり、不動産仲介の依頼者のように特定の専門的サービスを継続的に必要とする人は「クライアント」である。言葉は意識を規定する。だから不動産仲介業界は〝追客〟という言葉もやめるべきである。
























