「令和時代の賃貸ビジネス」 ~コンサルタント沖野元の視点~ 第86回 時間割引率と不動産投資の関係
住宅新報 2025年10月28日 号 12面

前回は不動産投資で悪徳業者にだまされる人の特徴として金融や不動産の知識が無い点を指摘した。更に、なぜ事前に金融や不動産について学ぶことなく高額な不動産投資を行うのかについて、「時間割引率」という概念を使って考えてみるところまでを書いた。ここで改めて時間割引率とは何かについて確認しておきたい。
時間割引率とは、将来受け取る価値よりも今すぐ手に入る価値を高く評価する傾向のことである。「時間割引率の高い人」は目先の利益や楽しみを優先する傾向が強く、「時間割引率の低い人」は将来の価値を現在の価値とあまり変わらないと判断する傾向が強いため、将来の利益を見据えた行動を現在において取りやすい。
不動産投資においての時間割引率は将来のキャッシュフローを現在の価値に換算するために使われ、DCF法やIRR(内部収益率)で投資の判断基準に用いられるが、ここでは話が長くなるためこの計算は省略したい。いずれにしてもこれらの計算によりリスクが正しく計算できるようになれば、だまされたり失敗する確率は抑えられるだろう。
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一般的な時間割引率に戻りたい。先述のように時間割引率の高い人は目先の利益に飛びついてしまう傾向がある。一方で不動産投資における悪徳業者は、将来的なリスクを過小評価させるような説明をする。将来的なリスクとは、空室リスクや家賃下落リスク、修繕費増加リスクなどである。だまされる人はこれらの点において過小評価した業者の言葉をそのまま信じて投資する。なぜそんなに安易に信じてしまうのか。ひとつは知識や経験がないから信じてしまうというのがある。知識が無いため業者の言っていることを自分の頭で考えて判断できない。更には時間割引率が高い、つまり目先の利益を重視する傾向があるがゆえに将来のリスク認識が甘くなってしまうということである。
言うまでもなく投資は自己責任の世界である。したがって、悪徳業者から身を守るには基礎知識を身につけると共に長期的な視点を持つことが重要である。ただ、時間割引率の高低は本人の性格や信念のようなものなので、容易に変えられるものではない。時間割引率の高い人はそのことを意識して慎重に投資することが望まれる。身近(家族など)に時間割引率の低い人がいれば、その人に相談しながら進めていくのが良いだろう。
同時に不動産の正しい知識を誰にでも持ってもらう場を作ることが重要である。米国では400以上もの大学や大学院で不動産のコースや学科がある。我が国では数えるほどしかない。もっと学校で不動産を教える機会があっても良いのではないだろうか。
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【プロフィール】
おきの・げん 日大大学院修了。不動産コンサルタント兼不動産系研究者。不動産実務検定講師。リーシングジャパン代表取締役。執筆・講演多数。






















