古民家宿の物語 日本全国リノベーション 113 山梨県甲州市「るうふ蔦之家」(下) 宿そのものが体験となる空間設計
住宅新報 2025年10月7日 号 21面

ワインの里をつなぐ
「るうふ 蔦之家」が重視しているのは、地域とのつながりを軸とした体験の設計である。勝沼町は言わずと知れた日本ワインの聖地。周辺には小規模ながら個性的なワイナリーが点在し、土地の風土とブドウの個性が息づいている。「蔦之家」では、その地の魅力を宿泊体験の中に自然に取り込む工夫がなされている。
室内には専用のワインセラーが設けられ、地元ワイナリーのワインが常備されている。専用グラスで自由に楽しめるだけでなく、徒歩圏内のワイナリーをめぐるためのオリジナルマップも用意。宿に泊まることがそのまま「勝沼の魅力を味わう旅」になるような導線が設計されている。
レトロな時間を紡ぐ
設えにもその精神が表れている。民芸調の家具や、ぶどう色を基調にしたソファやファブリックは全て特注または厳選されたもの。まるで一つの作品の中に滞在するような感覚が味わえる。「工業製品としての宿ではなく、物語のある空間を」と担当者は語る。レトロなダイニングでのワインは、特別な時間になることだろう。
宿の中央には石灯籠を配した静謐な中庭があり、四季折々の草木とともに穏やかな時間が流れる。蔵を生かしたラウンジでは、薪ストーブの火を囲みながら読書やワインを楽しむことができ、更には麻雀卓も備えられ、世代を超えて滞在を楽しめる工夫が凝らされている。
静けさにある本質
「一日一組限定」という形式は、宿泊者にとっての自由度と安心感を生むだけでなく、地域との距離も縮める役割を果たしている。株式会社LOOOFでは、現地スタッフが常駐し、チェックインや滞在中の案内を丁寧にサポート。定期研修を通じて接客の質を高めると同時に、「田舎の人情味」と「ホテルの快適さ」を融合させた運営スタイルを確立している。
「蔦之家」で過ごすひとときは、観光地の喧騒とは無縁の静けさと、ぶどうの香りに包まれた癒やしの時間だ。地域の文化と自然、そして人の想いが織りなす滞在体験こそが、「るうふ」が届けたい〝ととのう旅〟の本質なのだろう。
宿=「るうふ 蔦之家」
住所=山梨県甲州市勝沼町
ウリ=地域のワインと上質な和洋折衷体験ができる






















