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プレミアム会員限定大手デベ、事業リスクに先回り 脱炭素 待ったなし、サステナが生命線

住宅新報 2025年10月7日 号 1面

総合
大手デベ、事業リスクに先回り 脱炭素 待ったなし、サステナが生命線

 森ビルは地球温暖化による気候変動を、災害による物理的なリスクのみならず、ビル建設の規制強化、排出CO2への課税など制度上のリスクも含め、事業活動のリスクと捉えている。

 2030年度までの、グループの事業活動に伴うCO2排出量の削減目標を定めた。19年度の排出量を基準値とし、自社での燃料使用等による直接排出(スコープ1)9.5万トンと、購入した電気等による間接排出(スコープ2)16.1万トンを50%削減。森ビルの事業活動に関連する他社からの間接排出(スコープ3)42.8万トンを30%削減する。24年度時点の1、2の削減率は35%。3に関しては年度のプロジェクトなどで大きく変動するが、ゼネコン等と勉強会を重ね実現を目指す。こうして50年度までにネットゼロを達成していく。

 そこでまずは室内温度や起動開始時間の適正化、フィルターの清掃頻度の確認、共用部等の減灯、照度の変更、便座暖房の夏季停止など徹底した省エネを実施している。「これまでも省エネには力を注いできたが、更に乾いたぞうきんを絞るように取り組んでいる」(都市開発事業部環境推進部の宮臺信一郎課長、以下同)。

専有部も聖域とせず

 最近注力しているのはテナントデマンドレスポンスといって、電力需要が急増するピーク時にテナントと協力してひっ迫を回避し、電力を削減するというものだ。「今まで専有部はテナントに任せきりの聖域だったが、テナントごとの電力使用量を1時間単位で見える化するシステムを導入し、削減への啓発とモチベーションを提供している。更に協力を申し出てくれたテナントには、ビルの電力使用がピークに近づくと順番に、快適さを損なわない程度で一時的に空調を止めたり、照明の照度を下げたりしてもらう」。

 森ビルの電力削減に大きな役割を果たしているのが、自前で電力と熱(冷暖房)を作り出すエネルギーセンターの存在だ。六本木ヒルズの地下にあるエネルギーセンターは、都市ガスを燃料とする独自のエネルギープラント(特定電気事業設備)であり、六本木ヒルズ街区全体の電力を発電・供給している。ガスタービン発電機で発電する際に発生する排熱を熱供給施設へ送り、冷熱や温熱としても利用する高効率な大規模ガスコージェネレーションシステムを採用している。

 「テナントの過去の協力実績、ビルごとのエネルギー需要状況を蓄積し、AIで発電機器などをコントロールしている。電気需要がひっ迫していればガスで発電するなどして供給量を調節し、省エネを図る」。街区内の電気、熱は全てここで賄う。

 エネルギーセンターは虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズにもあり、それぞれの街区で平日は50%、年間で25%の自給率。「街区内にはオフィスだけでなく住宅やホテルなどもあり、時間による電気需要の変動を抑えられるため、エネルギー効率が高くなる」。

 課題としては「電力調整やBCP対策に有効なガス発電だが、CO2も排出される」点で、CO2から作るメタネーションガスの研究などに注目しているという。森ビルは自家発電量を30年までに、グループ全体の需要量である650ギガワット時の3割程度まで拡大していく方針だ。

農業を継続しながら発電

 もう一つの柱は、再生可能エネルギーの導入だ。既に40棟ほどの物件で電力100%を成し遂げた。24年度時点でのグループ全体の再エネ電力比率は45%。これを30年度までに100%とし、RE100を達成する。方策の一つは、テナントに非化石証書による再エネ電力を供給することだが、「日本の再エネ率は2割ほど。今後購入が難しくなることが予想される」。そこで自前の再エネ発電所を所有することにした。

 現在、茨城県筑西市、群馬県桐生市、栃木県栃木市の3カ所で太陽光発電所が稼働している。合計7ギガワット時の発電量で、一般家庭1600世帯分に相当し、グループ全体の電力の2%に当たる。電力はオフサイトPPAを用いて自社運営物件に供給される。どの施設も営農型なのが特徴だ。高位置に設置したパネルの下では、農業が営まれている。「農業の後継者問題など地域の課題にも取り組んでいく」。

大手町に「森」が出現 ウェルビーイング向上にも影響

東京建物が開発した大手町タワーの最大の特徴は、敷地全体の3分の1が森になっていることだ。ビルマネジメント第一部ビル営業グループの高橋優希課長代理は「地上の歩行者空間ネットワークの再整備と環境に配慮したまちづくりの観点から、『都市を再生しながら自然を再生する』という開発コンセプトのもと、単なる広場ではなく、本物の森の創造を目指した」と約3600m2に及ぶ森を、日本有数のオフィス街のど真ん中に創った理由を説明する。

 「初めての挑戦だけに、わからないことだらけ。そこで有識者、専門会社の協力を得ながらプレフォレストという手法を活用した」(高橋課長代理)。千葉県君津市の山林に約1300m2のスペースを確保し、土の起伏や人工地盤、土壌の成分、樹木の密度や種類などを大手町の計画地を模して植物を植えた。3年ほど掛けて施工方法や植物の生育、管理方法を検証。この結果をもとに、君津から大手町に育成した土壌や植物をそのまま移植して、本物の森を再現した。その森は「大手町の森」と名付けられた。

 森の整備には主に4つの効果があるという。1つ目は、脱炭素化への貢献だ。この森が年間18.3トンのCO2を吸収する。総炭素貯蔵量は65.1トン。2つ目は、都心で最も豊かな生態系を育む皇居からほど近い距離に自然の森を創ることで、様々な生物が行き交う移動拠点となり、都市の生態系ネットワークを充実させたこと。21年の調査では、208種の植物、129種の昆虫、13種の鳥類が確認された。絶滅危惧種も含まれる。タカやハヤブサ、まれにタヌキも現れるという。

 3つ目は、ヒートアイランド現象の緩和だ。開発後は敷地内で1.7℃、周辺敷地でも0.3℃の平均気温の低下が観測された。4つ目は、水の循環利用。屋根や人工地盤への降雨を植栽の灌水に使用するほか、人工地盤上の土は雨水の一次貯留施設となり、ゲリラ豪雨時の敷地外流出を防止している。

価値を可視化へ

 8月にはここ「大手町の森」で、森林研究・整備機構森林総合研究所(茨城県つくば市)との共同研究が始まった。都市緑地が人々のウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証する。大手町エリア周辺のワーカー30人を対象に、ストレスホルモン、交感神経活動等のバイタルの計測や質問紙を用いた心理調査によって「大手町の森」への滞在が身体的・精神的健康に与える影響を調査・分析する。ヒートアイランド現象の緩和効果の調査分析も行い、都市緑地の多面的価値の定量化・可視化を目指す。

 森は物件の価値を高める結果にもなった。ただし、「維持管理費はかなりのものになっている」。更に、気候変動による生息環境の変化への対処も課題だという。

 「大手町の森」は3月、国土交通省の「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」の第1号に認定された。評価は最高の「★★★(トリプル・スター)」だった。

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