古民家宿の物語 日本全国リノベーション 111 山梨県甲州市「るうふ 蔦之家」(上) 和洋折衷で土地の記憶を継ぐ
住宅新報 2025年9月23日 号 15面

ワインカラーの宿の玄関
山梨県・勝沼町。ぶどう畑が広がる甲府盆地の一角に、どこか異国情緒も漂わせる一棟貸しの宿が静かに佇んでいる。その名は「るうふ 蔦之家」。看板に描かれた「る」の文字を目印に、広い空き地の駐車スペースを抜けて進むと、立派な洋館建築が目の前に現れる。
ぶどう棚の下をくぐり、優しく揺れる暖簾をくぐって建物に入ると、ワインを想起させる赤を基調とした広い土間空間がゲストを迎える。本棚が壁一面に配され、本を手に取りながらゆったりと過ごせるこの空間は、一般的な純和風の古民家宿とは一線を画す「るうふ」ならではの世界観を体現している。
古民家宿のパイオニア
この宿を手掛けたのは、山梨を拠点に全国で古民家再生と宿泊事業を展開する「株式会社LOOOF(ルーフ)」。古民家の宿を通じて地域文化の再発見を促すことを目指している。
創業者で代表の保要佳江(ほようよしえ)さんは、山梨県の限界集落・芦川町の出身。「何もない」と思っていた故郷が、実は忘れられた魅力にあふれていることに気づき、Uターンを決意し、20歳代で起業をした。
14年、最初の宿「芦之家」は、地元の空き家をDIYとボランティアの協力で再生してオープン。それを皮切りに、山梨県内を中心に千葉や群馬へと展開を広げてきた。どの宿も「一日一組限定の一棟貸し」で、囲炉裏や焚き火体験、地元食材を生かした食体験など、宿ごとに土地の風土に根ざした体験をデザインしている。
新しい挑戦が続く
更にコロナ禍を契機に、投資家が物件を提供し、LOOOFが設計・施工・運用までを一貫して担うフランチャイズ型の運営代行モデルもスタート。社内には建築士や大工も在籍し、空き家探しから開業支援までワンストップで対応できる体制を築いている。
「蔦之家」はそんなLOOOFにとっても、新たな挑戦だった。和風建築が多い「るうふ」の中で、あえて洋館テイストの古民家に取り組んだことで、勝沼という土地の新たな魅力を表現する宿が誕生した。
宿=「るうふ 蔦之家」
住所=山梨県甲州市勝沼町
ウリ=地域のワインと上質な和洋折衷体験ができる






















