ニュースが分かる! Q&A 外国人の不動産取引に社会的関心 一部法令で対応も議論は慎重に
住宅新報 2025年7月29日 号 12面
連載: ニュースが分かる!Q&A

業者 こちらは大変希少な物件ですので、購入をお考えでしたら早めのご決断を。
顧客 確かに。しかしお値段が高いのだよなあ。
業者 それだけ、人気も高いということですよ。
顧客 それはそうだろうが、最近、外国人による不動産取得の是非が話題になっているじゃあないか。土地もマンションも、為替や物価水準的に有利な外国人が高値で買うから値段が上がっているのではないかね。管理や税金、治安等の問題もあるそうだし、やはり外国人が気軽に不動産を購入できると、日本人にとって不利な気がするよ。
業者 お客様、落ち着いてください。イメージで決めつけるのは早計ですよ。今のお話の中でも、複数の論点が混在していたようです。「外国人だから」というだけで問題視するのは、人権尊重などの面からも、お客様ご自身のためになりません。
顧客 うむ、少し乱暴な言い方だったかもしれない。しかし、もちろん不当な差別は許されないけれど、例えば我が国の国民生活が脅かされるなら、その抑止は国の正当な役割ではないのかな。
業者 一般論としてはその通りだと思います。ただ、ひと口に不動産取引と言っても、その対象や内容、想定される懸念事項等は様々です。国も今のところ、基本的には論点を慎重に整理して、実態把握に努めようとしている段階です。それに政府は7月15日、「外国人との秩序ある共生社会推進室」を発足し、「外国人による土地等の取得を含む国土の適切な利用・管理」へ向けた制度等の見直しも進める方針を示しています。
顧客 では、現状の課題を整理すると、どのような形に論点が分かれるのかな。
業者 私の知る限り、行政等の公的な見解はまだ見当たりませんが、世論で指摘されているのは、例えば「安全保障」「地域社会の安全・安心」「投機的取引による不動産価格の高騰」「集合住宅の管理」などでしょう。それぞれスケールが違いますし、取引内容も色々ですから、まとめて語れるものではありません。
顧客 確かに、それぞれ別々の話だね。しかし、どれももっともな懸念だとは思うけれど、国が対応するとしても当分先の話になるのかな。
業者 実態把握が必要なものは、ある程度の期間が必要だと思います。しかし安全保障分野などでは、徐々にですが既に法令による対応も進んでいます。
顧客 そういう法律が既にあるのかい。
業者 代表的なものに、22年9月に全面施行された「重要土地等調査法」(今週のことば)があります。防衛関係施設の周辺や国境離島等の一定エリアを、国が「注視区域」として指定し、土地・建物の売買等の際は〝国籍を含む〟必要事項の届け出を義務化しています。併せて、防衛施設への妨害行為など「土地等の不適切な利用」への勧告・命令の仕組みも設けました。
顧客 なるほど。国防に関しては、何かあってからでは遅いという判断か。
業者 更に今年の7月1日付で、「国土利用計画法」施行規則を改正する国土交通省令も施行されました。この法律では、所定の区域内または一定規模以上の土地を取引する場合に、行政への届け出を求めていますが、今回の省令改正で、その届け出における「国籍等の記載」が義務化されました。土地の譲受人の住所が国外であれば、国内連絡先の提出も求められます。国土利用の適正管理において、土地取引者の国籍は把握すべき情報である、と国が判断した形ですね。ちなみに、この2法は宅地建物取引の重要事項説明にも含まれているので、我々不動産事業者にも一定の影響が及んでいます。
顧客 こう聞くと、今まさに国も動いている最中のように感じるね。しかし、規制といっても取引自体の制限ではなく、国籍情報の届け出にとどまっているとも言えるが。
業者 取引の制限となると、我が国の不動産取引の基本的なスタンスから見直すような、大きな方向転換になりますからね。慎重に慎重を期す必要はあるでしょう。
顧客 本音は?
業者 人口減少が避けられない中、不動産市場の縮小につながる政策は、立場上ご勘弁いただきたいところです。
顧客 正直な不動産屋だね。よし。今回の物件、前向きに検討してみようか。






















