変わる賃貸借契約 新リース会計基準 不動産各社も備えよ
住宅新報 2025年6月17日 号 1面
現行基準では会計上で、売買処理のファイナンス・リースと、賃貸借処理のオペレーティング・リースの区分がある。今後の新基準での〝借り手〟はこの区分がなくなる。賃貸借取引では従来の費用計上ではなく、基本的に〝売買処理〟を行い、貸借対照表に資産と負債を計上(オンバランス化)する。新基準の対象のリース取引は、特定された資産で使用を支配する権利(経済的利益の享受や指図権)を満たす場合が該当する。借り手は、リース料の総額・割引率・リース期間の各要素から「リース債務」を算出する。これに資産除去債務(原状回復)などその他の費用を加えた金額を「使用権資産」として認識する必要がある。
リースと聞くと、日本的な感覚では自動車や複合機などを想起しがち。IFRS(国際財務報告基準)に合わせた新基準の国際的な視点ではリースは〝賃貸借取引〟を意味する。従来は、固定資産を借入金で購入した場合とリースで賃貸借した場合で、取引の実態は似ていながら貸借対照表上の表示が大きく異なる問題があった。新基準では正しく各社の業績を判断できるようにする狙いがある。
契約の段階から
そのため、実際の賃貸借契約を締結する現場担当者の段階から、リースの該当の有無を考慮した適切な契約締結と管理をしなければならない。
Sansan(東京都渋谷区)Contract One Unit ゼネラルマネジャー・プロダクトマネジャーの尾花政篤氏は、「従前と比べ、契約締結時の確認などで業務の負荷が高まる。しっかりと契約担当者は管理し、社内運用の統一ルールの策定と周知が重要になる」と指摘する。例えば、福利厚生の「借り上げ社宅」は、リース契約と判断される可能性が高い。新入・中途社員の入社や転勤、退職時に対応を要する。大手企業は、全国の支店や営業所、子会社の拠点が多く、対象社員の人数に比例して業務対応は膨大になる。
Sansanが2月に実施した新基準対象企業の経理・契約管理担当者の計600人の意識調査によると、新基準の内容を知っているのは、経理担当者が半数近い49.8%に対し、契約管理担当者ではわずか15.5%にとどまる。取り組みが先行する企業と様子見の企業で二極化し、まだ時間的な余裕があると感じている人が少なくないようだ。
そこで、新基準の対象企業は急ぎ、過去の契約書を漏れなく収集する必要がある。決算への影響額を試算する。運用フローを構築し、マニュアルを作成して周知する。その場面では従前の紙ベースの契約書では対応が困難で、既存システムの変更や最新ツールを導入する。デジタルデータ化をすることで、後工程の会計処理が円滑に進められる。
Sansanが提供しているAI契約書管理サービス『ContractOne』は、契約書のデータ化とデジタル管理を支援する。PDFデータをアップロードする、または電子契約を連携する、更に同社がスキャン作業を代行し、全文をOCR(光学的)で読み取る方法を選択できる。同社スタッフの目視の修正で正確性を担保する。データ化で台帳も作成しやすい。法務や総務、経理、営業の各担当者間の情報共有を容易にし、確認の円滑化で業務を最適化する(イメージ図(上))。
更に同サービスは、契約先や締結日などの主要な9項目をデータ化する機能を搭載している。更に自由な設定でリース物件内容やリース料などの項目を自動で抽出できる。一目でリースの識別に必要な情報を確認できる。同社は、「表形式」の契約書にも対応する機能を近く実装する。「新基準を機会に契約管理業務をデジタル化すればDXの取り組みでデータを利活用しやすくなる。事業運営や経営判断に役立てられる」(Sansanの尾花氏)。
煩雑な会計処理に
新基準で借り手にとっては契約書の管理に加えて、財務指標にも影響がある。総資産が増え、自己資本比率が低下し、ROA(総資産利益率=当期純利益/総資産)や総資産回転率が悪化し、株価の低下も招きかねない。新基準に基づく資産・負債をなるべく計上したくない新基準対象企業から今後、不動産会社は賃貸借契約の見直しを相談される場面が増える可能性があるため、新基準は賃貸借取引で必須の知識となる。
期間の算出
リースの会計処理は「期間」の算定も重要となる。契約期間がそのままリース期間にはならない。実態に即して決定する。例えば、マンスリーマンションの契約は月ごとの締結だが、今後も数年間の継続的利用が合理的に想定されれば、費用化が認められる短期リース(12カ月以内)にはならない。当該の継続する契約期間の全体がリース取引での対象となる。2年間契約のオフィスでも、次回の更新が確実だと合理的に判断できれば、4年間のリース期間扱いとなる。当該の期間に基づき全体のリース料に割引率を加味して割引現在価値を算出し、リース負債とする。諸費用を加えて使用権資産の金額とする。そこで、会計処理も最新システムを導入し、データ化すれば、業務対応が簡便になる。
マネーフォワード(東京都港区)は、そうした企業の今後のニーズに応える。新たなプロダクトサービス『マネーフォワード クラウドリース会計』を開発中で、9月までにトライアル版を、12月までに正式版の提供を開始する。
新サービスは、リース取引の効率的な調査や、洗い出し機能、自動判定機能のほか、使用権資産・リース債務・使用権資産償却費・支払い利息の各科目への影響額の自動計算機能と、会計仕訳の作成機能を実装させる見通し。
新サービスと連携できるよう、これに合わせ、既に同社で提供するサービス『マネーフォワード クラウド』シリーズで、『会計Plus』や『契約』『連結会計』を順次に機能対応させていく(イメージ図(下))。新サービスは単独でも利用できる。または、既存の各社で活用している他社の会計システムや固定資産管理システムと連携して併用もできる。このうち、『契約』では、新機能について2日に発表した。
マネーフォワード執行役員グループCAO経理本部の松岡俊氏は、「データはタイムリーに更新する必要がある。今後の更なる円滑な経理処理には、最新システムの導入が有力な選択肢になる。データベース化で、後工程も効率化される」と強調している。

























