「令和時代の賃貸ビジネス」 ~コンサルタント沖野元の視点~ 第75回 築古ビル再生の建て替えに対する優位性とは
住宅新報 2025年5月27日 号 12面

筆者が主催する北九州再生物件見学会において福岡でスペースRデザインの吉原勝己さんに再生された3棟の代表的な物件を見せていただいた。筆者は過去に吉原さんの講演を何度か拝聴していたが、今回の見学会で実際に物件を見ることであらためて分かったことがいくつもあり、それらを共有したい。
見学前に冷泉荘レンタルスペ―スで吉原さんによる物件再生に至った経緯などのレクチャーが行われた。ここで吉原さんは築古ビルのオーナーが再生を躊躇するいくつかの懸案事項について語られた。それは高額な費用が予測される「耐震改修」や老朽化した「排水管問題」、危険性の高い「外壁タイル剥落」である。吉原さんは築100年ビルを目指しているとのことで、これら懸案事項に目を背けず解決した上で再生を実現されてきた。この経験が現在の再生コンサルティング業にもつながっているという。
吉原さん曰く「福岡の物件で耐震改修を行って再生したところは少ない」とのこと。実際に見て驚いたのが、耐震改修した箇所を隠すのではなく意図的に見せるようにされていることである。他の箇所も再生の歴史(過程)が見えるように意図的に過去のままを残すようにされている。外壁などは特殊な接着剤で固めて保存してある。これは他の建物と一線を画しており、どこにもないレトロな雰囲気が街に残り、感性の合う若者を引き付けている。
こうした古い建物に価値を見いだす姿勢が認められ、冷泉荘は戦後初期のRC造民間集合住宅として初の国登録有形文化財として登録された。
また、吉原さんによると福岡は中心部を除いてビルが建てられた数十年前より建ぺい率や容積率が小さくなっているエリアが多々あり、建て替えをすると現在よりも小さいものしか建たず、しかも建て替えをすると解体費用や新築のための大きな借金を背負うことになるが、再生(リノベーション)であれば建て替えよりも少ないコストで、なおかつ(既存不適格にはなるが)当時の建ぺい率や容積率のままで現在の建物を維持できるということである。ここにひとつ、築古ビル再生の建て替えに対する経済的優位性がある。
最後に見せていただいた山王マンションでは、当初吉原さんは空室が埋まらないのはこの古臭い外壁タイルのせいだと思っておられたそうである。ただ、実はこのタイルは1枚1枚が有田焼で作られている大変貴重なものだとわかり、そのレトロな雰囲気が良いという若者が多くいて間違っていたのは自分の方だと悟ったという。
今回の見学会で得られた気付きはこの紙面では一度でお伝えできるものではないため、長崎の空き家再生事例見学も含めて次回の本稿にてお伝えしたい。
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【プロフィール】
おきの・げん 日大大学院修了。不動産コンサルタント兼不動産系研究者。不動産実務検定講師。リーシングジャパン代表取締役。執筆・講演多数。






















