ニュースが分かる! QアンドA 「かんぽの宿等」の鑑定評価と行政処分 問われる専門資格者としての立場
住宅新報 2011年9月6日 号 12面
連載: ニュースが分かる!Q&A
デスク いわゆる「かんぽの宿等」の不動産の鑑定評価を巡って、先般、国土交通省が不動産鑑定士と鑑定業者に行政処分と行政指導を行ったばかり。その中身はどういうことなのだ。
記者 日本郵政公社(当時)の依頼によって07(平成19)年8月31日付で提出された鑑定評価書に関するものです。郵政民営化に伴い、郵政公社がかんぽの宿など、採算性に問題のありそうな資産処分を進めていたころの案件です。郵政民営化をどう進めるか、推進派と慎重派の葛藤なども伝えられた時期でした。
鑑定評価の条件も期限間際で変更になるなど、依頼する側と、それを受ける専門資格者としての不動産鑑定士の立場や在り方が問われる案件でもあったわけです。
デスク 地元採用の従業員を解雇できないので、従業員付きという条件のものもあったそうだな。比較的繁盛しているところから閑古鳥の鳴いているところまで。売却の時期を含め、いろんな条件が設定された、というわけだ。公有地だから、売却に際しては、不動産鑑定評価書が必要だ。鑑定業者選定に当たっては競争入札が行われたようだな。
記者 3社・グループに依頼され、物件が多かったため、鑑定評価に携わった鑑定士も多かったということです。
デスク それで、何で処分されることになったのだ。
記者 理由は、「不動産の鑑定評価に関する法律」第40条第2項の規定に基づく、いわゆる「不当鑑定」です。不動産鑑定士4人に対して懲戒処分(3カ月鑑定評価等業務停止1人、戒告3人)を、ほかの不動産鑑定士13人に対して注意(行政指導)を行いました。また、鑑定業者にも1社に監督処分を、1社に注意を行いました。
具体的な処分理由として挙げているのは、業務停止を受けた鑑定士の場合、(1)重要な評価条件を鑑定評価書に記載しなかった、(2)ドラフトとして鑑定評価額等を依頼者に示した後に、依頼者側とのやりとりを経て鑑定評価の内容を大幅に変更した理由について、合理的な説明ができない、(3)対象不動産のほとんどについて自ら実査しなかった、(4)鑑定評価書に多数の誤り、極めて説明不足の箇所が見られる、(5)本社の不動産鑑定士として、他の不動産鑑定士に対し、依頼者からの評価条件を正確に伝達せず、また、ドラフト提出後の依頼者側とのやりとりをもとに、行うべき範囲を逸脱した指示を行った――です。
ほかの3人もここで挙げられた複数の理由で戒告処分となっています。
デスク 重要な評価条件の変更があったのに記載しなかったなど鑑定評価書に致命的な不備があったのに加え、内容の変更について合理的説明ができなかったといったことか。公共事業の削減で官需が減っている鑑定業にとっては、当時の日本郵政はこれからの大事なお得意さんだったわけで、条件変更もむげには断れないだろう。この一件は鑑定業界の置かれた立場がよく表れているようだな。
記者 国土交通省はこの処分を下すと同時に、日本不動産鑑定協会会長宛に「鑑定評価等業務の適正な実施の確保について」という通知を出し、不動産鑑定士の監督や今後の対策を求めています。
その中で強調しているのが、(1)実務指針などについて見直すべき点がないか早急に点検し、必要な改正等を行うこと、(2)いわゆる「依頼者プレッシャー」への対策を講じること――の2点です。
デスク 特に「依頼者プレッシャー」対策は悩ましそうだな。公正中立の立場の専門資格者とはいっても、報酬をくれるのは依頼者だから。ファンド案件でそういう一件があったばかりだな。
記者 3年ほど前です。ファンド(運用会社)の担当者の依頼というか、希望に合わせて鑑定評価書を書いたというものでした。「依頼者プレッシャー」をはねのけるは結構大変だと思います。
デスク 正に専門資格者としての立場が問われているというわけだ。鑑定協会では鑑定評価制度の正念場と受け止め、既に再発防止などに動き始めたようだ。揺るがない信念に基づいて仕事をすること。どんな分野でも、これが一番だな。 (9面に関連)






















