本紙・25年春の家賃調査 東京圏 単身向け物件が急伸 賃料負担能力アップ 家族向けに分譲待機組が流入
住宅新報 2025年5月13日 号 1面
東京23区の分譲マンション価格は、一般的なサラリーマン層に手が届きづらい水準に達したことで、持ち家を検討する層が様子見に転じ、賃貸住宅へという行動が家賃の強含みを演出している。とりわけ単身者向け住宅での賃上げが顕著だ。いわゆるワンルームマンションである。
本紙調査によれば、マンションの平均家賃を見ると、ワンルームの全体平均値は10万3938円となり、前回調査(24年9月1日時点)との比較で約29%と3割弱の上昇率を示した。上限家賃の平均値は11万1250円(同20.51%上昇)である。
コロナ渦中のワンルームは、都心から郊外に需要が一斉に引く様相を見せたが、それとは反対の都心回帰が鮮明となっている。企業の出社要請も強く、週に3~4回の出社が珍しくなくなったことで、会社に近い場所に居住地を確保する動きが後押しする。ただ、ワンルームの下限家賃の平均値は、6万9571円と昨年秋の家賃調査から1.45%の上昇にとどまっている。このことは、例えば一定の年数が経過した物件で生活利便性が劣る人気のない物件と、人気のある駅近の新築・築浅に加えて金融機関や行政、スーパーなどの生活利便性が申し分ないという好条件のそろう物件との格差が広がっている公算が大きい。
企業の出社要請以上に企業側が優秀な人材を獲得するために家賃補助を手厚くする動きもあり、こうした傾向が広がりを見せていることで、入居者の家賃負担能力が上って東京23区で住まいを探す行動に反映される。昨年からの新入社員の初任給引き上げを始めとする若年層への賃上げの動きが物件選びを強気に向かわせている。
同様に他のマンションタイプを見てみると、1LDK~2DKの全体平均値は10万6702円(同3.84%上昇)となり、下限平均値が8万7669円(同2.61%上昇)、上限平均値が12万5737円(同4.73%上昇)である。ワンルームほどの驚異的な伸び率ではないものの、上昇機運が続いていることが分かる。2LDK~3DKは、全体平均値が15万4098円(同1.82%上昇)となり、下限平均値が12万5247円(同0.37%上昇)、上限平均値が18万2949円(同2.85%上昇)となった。
これらワンルームマンション以外の2つのカテゴリーの住宅は、分譲マンション志向で様子見・待機中の所帯持ちやカップルの需要を引き付けるタイプと言える。コンパクト系は新規供給が最近増えてきたとはいえ、ファミリー向けと同様に供給不足感が指摘されている。両タイプとも上限の平均値が全体平均値を上回っており、特に供給数の少ない広めの賃貸住宅の争奪戦が家賃を引き上げる要素として浮上する。
ボーナス期間は一服
東京カンテイの直近のデータを見ると、東京23区の分譲マンション賃料は、築浅事例の増加を背景に3月まで4カ月連続で上昇し、築21年以上を除いて最高値を更新中だ。 同社市場調査部の高橋雅之上席主任研究員は、「分譲を買えない層の受け皿と都心回帰によりマグマのように溜まった居住人数の増加が相まって賃料を押し上げている。ただ、その転入超過数も一巡しており、今後は、これまでのような上げ幅は難しくなりそうだ」と指摘する。
高橋氏は、「向こう2~3カ月で変調するわけではないが、賃上げのボーナス期間は一服した」とみる。すでに日本人の主食である米の値段に象徴されるように物価高は深刻であり、賃上げ分を吹き飛ばしている。家賃上昇を阻む要素として米トランプ政権の通商政策にも注目が集まる。不透明感の強い米国の高関税政策で企業業績に悪影響が出れば、思ったように賃上げをすることができないためだ。
編集部から一言
賃貸市場に併存する供給過多と供給不足
家賃の強含みが鮮明となった。東京圏の春の繁忙期は総じて好調だったようだ。物価高、賃上げ、分譲価格高騰。このトリプル高が家主の家賃設定を強気にさせている。
今回、ワンルームマンションの家賃が急伸したのが特徴的だった。ただし、ワンルームの供給過多が解消されたわけではない。人気物件の裏には、空室を埋めるのに苦労している物件は少なくない。半面、家族向けは供給不足感が募っている。ファミリー層が部屋探しに来ても紹介する物件がないとの声が多かった。賃貸住宅を新たに供給する側としては長期目線の事業戦略を家主に示す必要があろう。

























