GW特集インバウンド最前線 変わる宿泊ビジネス 開発大手も〝民泊型〟に本格参入か 〝暮らすように泊まる〟スタイルも
住宅新報 2025年5月6日 号 12面
東急(東京都渋谷区、堀江正博社長)は今春、長期滞在者向けの「家具付きマンスリー賃貸」と、旅行者向けの「宿泊」2つを組み合わせた都市型アパートメントホテル事業を開始した。シリーズ名は「ザ・アパートメントホテル・バイ・スタイリオ」。「宿泊」は住宅宿泊事業(民泊)として行う。不動産開発大手が民泊事業に本格参入するのは珍しい。
まずは都内・渋谷や代々木、恵比寿で計4物件・41室でスタートした。同社都市開発本部都市戦略事業室不動産ソリューショングループ課長の小池和希氏は、「旅行客やビジネスマン、デジタルノマドなど幅広い層に利用されている。平均滞在日数は3泊以上と長く〝暮らすように旅をする〟ライフスタイルが増加しているのを感じる。4月の稼働率は95%ほど。順調な滑り出しだ」と話す。
参入した理由について小池氏は、「宿泊自体が長期化していく傾向にあると考えている。〝暮らすように旅をする〟というライフスタイルの高まりを背景に、長期滞在と短期宿泊の両方のニーズに対応するブランドを立ち上げたいと考えた」と説明する。
物件は基本的には既存の賃貸住宅を取得してリノベーションを行う。東急沿線エリアの遊休不動産の有効活用でもあり、新たなライフスタイルを提案することで沿線価値を向上させることにもつながっていく。
「工事費高騰が続く中、新規開発は事業機会が限られる。住宅ストックを生かしてバリューアップを図るのが合理的」(小池氏)。
マンスリー賃貸ではオンラインで賃貸借契約を行い、宿泊手続きはスマートチェックインなど最先端のソフトウェアを活用する。「現在の宿泊業界は人手不足が深刻だ。テクノロジーの活用で手間を減らし、利便性を高めて主に若い世代の需要をしっかり取り込むことができれば事業としてのポテンシャルは高い。観光立国実現の一翼を担えればと思う」(小池氏)と意欲を示す。
慎重だった大手も
従来から大手ディベロッパーは「「民泊事業には慎重」と言われてきたので、その意味では今回の東急の動きは注目に値する。不動産大手が民泊事業に慎重な姿勢を見せている理由は、民泊事業は手間がかかる上に、グレーなイメージを払しょくできずにいたためだ。民泊事業は18年6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行で法的規制の対象となった。当時、観光客の宿泊ニーズが多様化する一方で、安全面・衛生面の確保や騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルが社会問題化したことが背景にあった。
そうした中でも近年は「不動産を提供し、運営は専門代行会社に任せる」というスキームで民泊事業を始めている大手は東急以外にも散見される。多様なスタイルが登場し、従来のような民泊イメージから脱却が進んでいると思われる。
グループや家族で
インバウンドも日本人も近年は家族やグループで旅行する人たちが多いため、一部屋に数人が泊まれる宿泊施設が人気となっている。従来型ホテルはシングル、ダブルが中心なのでそうしたニーズへの対応が難しい。その点、リノベーションした住宅を貸し出す民泊ならば40m2程度のスペースで貸し出すことができるので需要を確保しやすい。
賃貸住宅とホテルの中間に位置する「レジデンシャルホテル」を運営するリアテクノロジーズ社長の橋野宜恭氏は、「宇宙の法則と呼んでいるが、不動産は空間・時間を共に刻むと利回りが上がる。空間は狭くするほど坪単価が上がるし、時間面では長期で契約して、短く売ると利益が出やすい。普通借より定借、定借よりマンスリー、マンスリーよりも民泊といった具合だ」と話す。
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東急の「ザ・アパートメントホテル・バイ・スタイリオ」は、当面の助走期間はユニットというパートナー会社と組んで運営するが、将来的には内製化することを見据えてブランド化していくという。
日本は今後リゾート地での〝ワーケーション〟や法人向けの長期滞在型研究・宿泊施設などライフスタイルや働き方改革を背景に、新たな宿泊ビジネスが脚光を浴びる可能性が高い。ホテルでもなく従来の民泊でもないハイブリッド型、いわば「民泊を超える民泊事業」に大手各社が本格参入する日も近いのではないか。

























