不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編224 和室の畳の取替え時期の判断基準は?
住宅新報 2025年1月14日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.このところ貸主の「修繕義務」に関する話が続いていますが、最も判断に困るのは、和室が「売り」の物件で、借主から契約更新などの際に畳の取り替え要求をされた時です。どのように考えたらよいのでしょうか。
A.難しい問題です。しかし、そのために賃料を上げるというわけにもいきませんので、この問題についても、貸主が負う「修繕義務」との関係で判断するしかないと思います。
Q.畳の取り替えが「修繕」だとすると、どういう基準で判断するのでしょうか。 A.貸主には借主に対する修繕義務があり、その内容は、「賃貸物を借主に使用・収益させるために必要な修繕」ですから(民法606条(1)本文)、すべてのケースで修繕をしなければならないということではありません。判例は、貸家に生じた破損・汚損等の修繕について、「居住の用に耐えないような状態を生じ、あるいは居住に著しい支障が生じた場合」に修繕義務が生じるとしています(最判昭和38年11月28日)。
しかし、この借主に対する「必要な修繕」を、この最高裁の判断基準に当てはめた場合、今回の畳の取り替え問題にそのまま当てはめることはできません。和室における畳の問題は、それが単に部屋の付属品ではなく、その畳の持つ風格とその清潔さ・快適さから、居住者の健康を維持するための重要な構成要素になっていると言えるからです。したがって、畳が長期的に使われたことによって、その畳表が黒く変色し、あるいは擦り切れ等が生じているような場合は、既に取り替えの時期が来ていると判断してよいと思います。
Q.仲介する私たち宅建業者の立場からは、次の入居者への販促の意味も兼ねて、もう少し早目の交換が望ましいと思うのですが、和室以外の部屋については、裁判所はどのように考えているのでしょうか。
A.一般的な裁判所の考え方は、「賃借人は、経年劣化は甘受すべき」ということですから、先程の最高裁の考え方と同じように考えてよいと思いますが、この考え方は、いずれも既に入居している賃借人からの要求に対する判例ですから、その意味では、次の入居者への販売促進というような営業的な判断が入る余地がありませんので、やむを得ないものと言えるものかも知れません。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















