不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編223 借主に賃貸物件を修繕する権限はあるか?
住宅新報 2025年1月7日 号 15面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回・前々回の、貸主の修繕義務についてはよくわかりましたが、もし貸主がいつまで経っても修繕しなかったらどういうことになるのですか。
A.そのような場合には、借主が貸主に催告した上で、借主自ら修繕することができます(民法607条の2)。しかし、そのためには、その目的物を修繕しないと、借主の目的物の使用に支障を来たすというような事情が必要で、さほどの理由もないのに勝手に修繕することはできません。
そこで民法は、次のように規定しています。
(賃借人による修繕)
第607条の2 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
Q.つまり、借主としても、貸主に修繕してもらわないと生活に支障が出るとか、契約の目的を達することができないといった「修繕の必要性」がないと、貸主に修繕を催告することができないということですね。
A.そこまでの厳格な要件が必要だとは思いませんが、少なくともそれに準ずる程度の支障、たとえば風が強いときに窓からかなりの風切り音がするとか、雨や風が吹き込むなどの支障が出ているのであれば、催告は可能だと思います。要は、常識の問題だと思います。
Q.そうすると、借主が日常生活に困る程度の支障が出ていれば、修繕の催告ができるということですね。
A.そういうことです。そしてその結果、貸主が相当の期間内に修繕をしなかったときは、借主に修繕をする権限が生じるということです。なぜならば、その民法607条の2の次に、「賃借人による費用の償還請求」という規定があり(608条)、その規定によれば、「賃借人が賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求できる」と定めていることからも、この民法607条の2の規定は、賃借人に賃貸人に代わる「修繕権限」を付与したものと解することができるからです。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















