不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編216 貸主の破産宣告に対する借主の対抗策は?
住宅新報 2024年9月3日 号 13面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.前回の連載では、「貸主が破産したことによって、その破産管財人が借主との賃貸借契約を解除したいと思った場合であっても、借主が賃料を支払っている限り、借主との賃貸借契約は解除できない」ということでした。
A.そのとおりです。2004(平成16)年の破産法の改正によって、「賃借権その他の(中略)権利につき、登記、登録その他の第三者に対抗できる要件を備えている場合には、適用しない(解除できない)」と規定されたため、第三者対抗要件を備えている借主に対しては、原則として、破産管財人は解除権を行使できないとされたからです(同法56条(1))。
Q.なぜ、そのような法改正がなされたのでしょうか。
A.それまでは、破産法の一般原則を定めた同法53条(1)の規定によって解除できるとされてきたのですが、一方で、借地借家法の規定では、同法に定める一定の規定に反する特約で「借主に不利なものは無効」とされていますので(同法30条)、それとの兼ね合いをどうするかということで、平成16年の破産法の改正になったわけです。
Q.ということは、それまでは破産管財人としても、職務遂行上借主に退去してもらった上で、その賃貸借物件を第三者に高く売却したいということから、解除できるという対応をとってきたわけですね。
A.そういうことです。しかし、実際には難しい面もあったことから、入居したままでの売却あるいは競売などが選択されていたようです。
Q.ところで、債権者の中には、賃料債権を差し押さえる者もいたのではありませんか。
A.当然いたと思います。したがって、そのような抵当権の物上代位による差押えがあれば、それが優先しますので、借主としては、破産管財人に賃料を支払う際に、敷金返還請求権の額の限度で、支払額の「寄託」を請求することができるようになっています(破産法70条後段)。
この点については、以前の〔賃貸借編197回〕でもお話をしましたが、そのために、借主としても、そのための敷金・保証金返還請求権の内容を記載した「債権届」を裁判所に提出することになっています。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















