不動産取引現場での意外な誤解 賃貸編213 賃貸借契約を公正証書にする意味はあるか?
住宅新報 2024年8月6日 号 15面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q.一般に〝賃貸借契約は「公正証書」にする必要はない〟と言われていますが、それ本当なのでしょうか。
A.「事業用」の定期借地契約を締結する場合以外は、その必要がないと言われているのは事実です(借地借家法23条(3))。
しかし、以前、「賃貸借編208回」(4月9日号)でもお伝えしました通り、賃貸借契約を「公正証書」にしておくと、何かにつけて便利であることは事実です。
それは、公正証書を強制執行の認諾約款付のものにしておくと、その公正証書は「執行証書」と呼ばれ、借主の賃料不払い等に対し、その給付を命じる確定判決と同じ効力をもつものになるからです(民事執行法22条5号)。
つまり、貸主がそのために裁判所に行って訴訟を提起したり、支払督促の手続をしなくても、その公正証書をもって、直ちに強制執行ができるからです。強制執行ができるということは、その借主の財産を差し押さえることができるということです。その上、その財産は、現に部屋の中にあるものだけでなく、借主が会社から支給される給与・賞与なども対象になりますので、この上ない武器になるわけです。
Q.ということは、そのような強制執行の認諾約款付の公正証書にしておけば、たとえば保証人の取りづらい借主などに対しては、むしろその方が効果的なのかも知れませんね。
A.そういうことです。ただし、ここで注意しなければならないことは、いかに強制執行ができるといっても、それは「金銭給付」を目的とした請求権に限られているということです。したがって、たとえば「賃料の未払いが2か月続いたら、直ちに部屋を明け渡す」というような約定を公正証書にすることはできません。
Q.「明渡し」の強制執行はできないということでしょうか。
A.はい、できません。その上、公正証書は、公証人によって作成されますので、公証人法26条の規定によって、無効と考えられるような条項(たとえば、単に、「賃料を滞納した場合には賃貸借契約を解除する」というような条項)についても、公正証書にすることはできません。
渡邊不動産取引法実務研究所 代表 渡邊 秀男






















