高級建て売り分譲に商機 〝唯一無二〟の商品企画 働き盛り 富裕層に照準 特別感を醸成
住宅新報 2024年4月9日 号 1面
野村不動産は22年に同社初の2億円超の分譲戸建て住宅5戸を、翌23年も初弾同様、成城に第2弾の6戸を供給。いずれも即日完売に至った。同社は今年、東京都世田谷区に2億円超の物件に特化した販売拠点「プラウドシーズンギャラリー駒沢」を開設。城南・城西エリアや横浜市青葉区で10案件を手掛け、25年までに順次供給する計画だ。
トヨタホームも22年に都市型の高級戸建て分譲住宅シリーズ「Toyota Home Est」を立ち上げ、等々力で初弾4棟を供給。現在は世田谷区内に16区画の開発が進む。建て売り住宅が主力の地場大手のポラスグループも、西武線沿線の都内や景観地区など、エリアによっては高価格化を進めている。
一方、従来の建て売り住宅のイメージとは大きく異なる物件も認知され始めている。これまで高級建て売り住宅を手掛けてきた事業者は差別化を進行。約20年名古屋で建て売り住宅を供給する諸戸の家(三重県桑名市、松本浩二社長)は、3年前に東京にも拠点を開設、都内で約5億円の建て売りの供給を開始した。元は数寄屋造りの注文住宅を手掛けていたが、現在は、建て売りに特化している。
アイネスト(東京都目黒区)は、1987年の設立以来、城南エリア(品川区・目黒区・大田区・世田谷区・渋谷区・港区)に特化し、これまで1000棟を超える建て売りの戸建て住宅を供給してきた。同社の物件は「見た人から必ず〝これ建て売り?〟と聞かれる。また、同じものは作らない。物件ごとにディレクターを配し、エリア特性や敷地の特徴、街の景観などを意識しながら、それぞれに合ったコンセプトをとことん考える」(井田高広専務)という点が特徴だ。
東急沿線を中心に展開していたが、同社物件の大きな特徴である、デザインコンシャスな住宅が受け入れられやすいエリア特性からニーズの掘り起こしを見込み、ここ10年余りは、小田急沿線や京王線沿線といった世田谷区北部でも恒常的に実績を重ねている。現在、東京都世田谷区に供給している物件の一つは、京王線明大前駅から徒歩3分に立地している。
この物件は、従前の土地所有者が高齢に伴う住み替えで売却したもので、仲介会社からの情報を受け用地を取得。当初は3棟での供給を計画していたが、床面積や北側斜線の高さ制限などの課題などを鑑み、〝敷地のポテンシャルを最大限に引き出すのは2棟〟と判断し、計画を変更した(1棟は既に成約済み)。
背景にコスト増も
ここ数年、大手事業者が高価格帯建て売りの供給を相次いで進めている。井田専務は、「城南エリアは特に人気があるので、購入検討者が多い分、供給する事業者も増える」と物件の競合も想定する。一方で、「用地価格のほか、建築資材や人件費など、全てが上がっているので、以前よりも高価格で建て売りを供給せざるを得ない側面もあるのでは」と見る。
大手事業者の手掛ける建て売り住宅の供給は、相当数の供給棟数を確保することでスケールメリットを生かすケースが多く、高価格帯の建て売りも、そのスキームの延長線上にある。一方、同社の場合、城南エリアに特化していることから、仲介事業者との関係を構築してきた中で「ここ数年、特に高額になっているが、用地を安く仕入れているということはない。また、年間50~60棟程度の供給ではコストは下がらない」という。
在留外国人の購入増加も
同社の顧客の中心は、35歳から45歳くらいの会社経営者や医師や弁護士といったライセンサーなど、働き盛りの富裕層だ。一見、注文住宅の購入検討者と重なる。井田専務は、「当社でも、土地を購入して注文住宅を建てるか、建て売りを購入するかを迷う顧客はここ数年増えている。当社の顧客には、資産はあるものの時間がない。彼らが望む注文住宅の建築に必要な、気に入った場所に用地を見つけ、建築雑誌で建築家を見つけて交渉や打ち合わせを重ねて作り上げるには、1年での完成は到底無理。2年掛かるともいわれている」と指摘する。
だが、彼らの購入動機は〝タイパ〟(時間対効果)のみではない。「富裕層には、出回っている物件を嫌がる心理がある。〝あなたにだけ〟〝オンリーワン〟といったような特別感が鍵。建て売りでも〝建築家と一緒に作ってもこんな家は作れない〟と彼らが思えば、注文住宅以上の特別感が生まれる。当社は独立系の事業者なので制約にしばられず、〝やりたくてもできない〟といったことはない。ディレクターたちが表現したいことは、基本的に実行している点も〝唯一無二〟のデザインにつながっている」(井田専務)。
供給棟数に限りがある分、建築費は高くなる。原価が高くなる分、それを反映できる地域への供給に限られるが、一方で、「金額が高くても納得がいくもの、欲しいと思うものには出し惜しみしない顧客が増え、〝不動産は資産〟という感覚が広がってきた」。また、欧米系の在留外国人の購入も増加。23年度は3割を見込む。「東京の街が外国人から認知されてきた」という変化を感じるという。
























