ポストコロナ 本格始動 夏の陣 次世代起点で需要変化に対処 【空き家・空き店舗 価値創造へ】
住宅新報 2023年8月1日 号 17面
失った収益機能を取り戻す 消費意欲の刺激が鍵を握る
新型コロナウイルス感染拡大では、政府が緊急事態宣言で〝外出禁止令〟を出し、商業施設は開店休業状態が続き存続が危ぶまれる窮地に追い込まれた。実質無利子・無担保のゼロゼロ融資など政府支援に支えられた店舗は少なくないが、それでも耐えられず倒産、廃業となった例は珍しくない。ただ政府が社会経済の正常化にカジを切ったことでコロナの直撃を受けた飲食・サービス業が息を吹き返しつつある。
行政も相次ぎ支援
中小企業庁では、3年に1度のペースで全国を対象に「商店街実態調査」を公表している。直近では昨年4月に21年度調査分を公表し、同10月に更新。商店街の平均空き店舗率は13.59%と前回18年度調査時より0.18ポイント低下した。コロナ渦中にもかかわらず空室率が低下しているのは政府支援を映し出している。
とはいえ、空き店舗の今後の見通しは「増加する」(49.9%)と回答した商店街が最も多く半数に上った。商店街が抱える課題は後継者問題が最多で7割超を占める。商店街に不足する業種・業態の出店誘致活動等に取り組んでいない割合も約8割に達する。
東京都台東区は、空き店舗活用で商店街を支援する事業を今年12月28日まで実施する。店舗と住宅の共用部分の分離に必要な改修費の一部を100万円を上限に補助する。兵庫県は空き家活用特区条例(22年4月1日施行)を制定し、利活用を促すため補助事業として「空家活用特区総合支援事業」を創設した。市町からの申し出を受けて特に対策が必要な区域を県が指定するもので、古民家も含めて空き家を住宅、事業所、交流拠点として活用するのに必要な改修工事費を補助する。
コロナ禍は都市部ほど店舗への影響が甚大だった。飲食店ビル等はシャッター街と化し、収益不動産としての機能を失った。だが、今年5月8日を境に雰囲気が変わった。新型コロナが感染症法上の扱いがインフルエンザなどと同じ5類に移行したためだ。
旺盛な消費意欲に対応
JR東日本では、上野駅のエキナカ商業施設「エキュート上野」で、一部区画をリニューアル工事して7月20日までにブランドの変更や移転・改装など7つのショップが営業を始めた。これに続いて秋以降もリニューアルを順次実施していく予定だ。
空き家活用サービス「アキサポ」を展開するジェクトワン(東京都渋谷区)は、半世紀が経つ都内の築古住宅の屋根を葺き替え、雨漏り補修、外装塗装、床の張り直し、トイレなどの水回りを一新し、飲食店に再生した。10年の空き家状態から鯛茶漬けを提供する和食屋兼和カフェ「粋黒(いっこく)」に仕立て上げ6月中旬に開業させた。再生は200件以上の実績がある。
社会経済の正常化とともに空き店舗や空き家を安定した収益を生み出す試みが相次いでいる。もっとも、ゼロゼロ融資の返済がこれからピークを迎える中で、撤退を余儀なくされる事業者も増えそうだ。この問題が一巡するまで空き店舗等の本格的な復活は道半ばであるが、行動制限のない日常下で消費者が財布のひもを緩めるサービスを誘致できるかどうかがカギを握っていることは間違いない。
スペースリーVR内覧 来場率や成約数アップを実現 精度の高い情報を的確に伝える
空き家対策では単純に解体するのではなく、維持管理のほかにも活用の促進を含めた検討が必要となる。その際、的確に分かりやすく物件情報を伝えることが重要になる。
自治体の活用
空間データ活用プラットフォームを提供するスペースリー(東京都渋谷区)は、広島県や和歌山県での正式導入など各自治体が運用する「空き家バンク」の物件案内で、同社のVR(仮想現実)クラウドソフト「スペースリー」が活用されている。従来のような平面図や2次元の写真とは異なり、VR技術によって時間や場所を選ばずに物件を内覧できる特徴がある。
VR内覧は、オンラインで360度の全方位に室内を確認しながら、いつでも分かりやすく、空き家情報を得られやすい簡便さがある。実際、活用を始めた各自治体では、問い合わせ数が倍増。成約率も導入前に比べて2倍以上に高まり、運営する自治体職員の案内負担の軽減や業務の効率化の効果を得ている。空き家情報を的確に伝えられるため、物件登録数が従前の3倍から4倍にも増えているという。VRを活用した「空き家対策」として、また、移住希望者の関心を高めて地域の観光面を含めた「地方創生」の取り組みの1つとして、各自治体で活用が広がっている。
不動産会社で
同社提供のクラウドソフト「スペースリー」は、不動産売買・賃貸会社、ハウスメーカーの営業活動や、製造業の工場研修分野でのDX推進の場面で普及している。4月現在で7200以上の事業者が業務で活用しているようだ。ウェブブラウザで再生可能な高品質のパノラマVRコンテンツを、直感的な操作によって誰でも簡便に制作・編集・管理、活用まで一括して行える。遠隔地からでもVRの空間を案内する「遠隔接客」が可能になる。不動産・建築会社での物件内覧でも成約率の向上に寄与している。
「スペースリー」の活用によって、建築事業者のマリモハウス(広島市西区)は、問い合わせからの来場率が前年比で1.5倍に増加した。また、賃貸管理事業者の良和ハウス(広島市西区)では、22年8月から23年2月までの7カ月間で成約数が前年比105%にアップした。更に、23年1月の繁忙期の1カ月間で90件の現地内覧の案内を削減して業務を効率化している。
日本エイジェント(愛媛県松山市)は、スぺースリー提供の不動産業界向け画像管理システム「物件データ管理」と物件撮影アプリ「Spacely Photo Task」を用いている。これらの活用により、賃貸物件の写真撮影作業や、パノラマVRコンテンツを含めた物件情報の自社ホームページと各種ポータルサイトへの掲載を自動化している。その結果、1物件当たりの撮影・画像登録作業を40%効率化させ、前年対比で反響数が43%アップしている。
「スペースリー」では、新機能を順次に実装している。360度VR画像(パノラマ画像)を自動的に3次元化する「パノラマ変換3Dプレイヤー」機能は、オンラインながらも、リアルな内覧に近い〝顧客体験価値〟を提供できる。ドールハウスのように、上部から物件を見渡せる画像は、全体を俯瞰(ふかん)しながら直感的に把握できる。パノラマVR写真へ家具を自動で配置して室内のサイズを測定するなどし、新たな暮らしをイメージしやすくなる。
メタバースでも
「スペースリー」では新たな展開もある。リアルネットプロ(東京都新宿区)が運営している不動産賃貸分野のリアルタイム空室管理システム「リアプロ」との連携を開始した。物件情報を掲載する不動産賃貸管理会社が「リアプロ」内に「スペースリー」のURLを連携させれば、不動産賃貸仲介会社と簡単に共有し、入居希望者にVR内覧を案内できる。更には、GATES(東京都新宿区)が開設した賃貸仲介のメタバース(仮想空間)店舗「GATES WORLD」でも、「スペースリー」の技術が活用されている。
経済産業省では、「IT導入補助金」を通じて中小企業のIT活用を支援している。「スペースリー」も、その補助対象ITツールとして採択されている。以前からVRは不動産会社で活用が始まっていた。VRサービスは、不動産関連の業務を効率化するだけでなく、コロナ禍で体験した消費者からもその有用性を評価されている。場所や時間を選ばず物件を内覧できる新たな体験を提供できるため、自治体や不動産会社で今後も活用が広がっていきそうだ。

























