明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第485回 住宅密集市街と都市計画 重点的な耐震化でデメリット予防
住宅新報 2023年5月23日 号 4面
【学生の目】
帰り道で「隣との距離が近い家が多いな」と感じた。隣家の玄関が2階窓近くにあり、中が丸見えではないかと思ったのだが、周辺を散策すると、狭い道路に面して同様の住宅が沢山あった(写真)。
住宅密集市街地の主なデメリットとして3点指摘できる。1つ目は、震災時の建物被害の拡大や火災時の延焼拡大だ。境界線付近まで立つ住宅が密集すると、震災で損壊した住宅が周辺住宅に倒れ掛かる、建材が飛散するなどして、二次被害を招く可能性がある。
延焼防止について建築基準法は、隣地境界線から1階で3メートル、2階以上で5メートルの範囲を「延焼のおそれのある部分」として、高い耐火性能を求める。住宅密集市街地では、建物のほとんどの部分が「延焼のおそれのある部分」に含まれ、一定の耐火性能を有しても延焼リスクが高いことに変わりはない。
2つ目は、非常時に緊急車両が到達困難なことだ。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災では、木造住宅が密集する地域で大規模火災が発生したが、道路が狭く消防隊の到達までに時間がかかる、到達できないなど、消火活動が困難なケースがあった。狭隘道路は平時でも通行が容易とはいえない上に、損傷した建築部材が道路に散乱した状態で、大型の消防車が通行することは困難を極める。
3つ目は、平時のデメリットとして、建て詰まった街並みに圧迫感を感じる、プライバシーの確保が困難な点がある。家がある埼玉県吉川市は面積31.66平方キロ、人口7.2万人弱の小さな自治体だ。都心から20キロの首都圏にあり、96(平成8)年に市になった。吉川町だった73(昭和48)年のJR武蔵野線開業を契機に人口が急増、都市基盤が不十分なまま開発が進んだ。人口増加は今も続く。
都市計画法(68<昭和43>年)が施行されていたにもかかわらず、計画的とは言えない市街地ができたことは、同法が効果的でなかったことを物語るが、市は市域の23.7%を占める市街化区域の66.6%に地区計画を定め、市街地形成に新たな秩序を取り入れようとしている。建築物については、2025(令和7)年までに住宅の耐震化率を95%以上にする建築物耐震改修促進計画を作成し、避難路等に隣接する建築物、密集市街地における建築物を重点的に耐震化し、前述のデメリットを予防しようとしている。
【教員のコメント】
都市計画法は土地利用規制法と都市開発法の両側面を持ち、規律が輻輳(ふくそう)する。人口増加、経済成長を背景に後者が優先され、前者の形骸化は否定できない。社会が変化した今、規範を逆転させる機会であり、持続可能社会に向けた必要事でもある。

























