不動産取引現場での意外な誤解 賃貸借編179 借家人が死亡した場合の賃借権相続の行方は?
住宅新報 2022年10月11日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解

Q 前回は、借家人が離婚した場合の妻の財産分与による賃借権の承継問題が取り上げられていましたが、今回は、借家人の死亡による賃借権の相続問題をお聞きします。まず最初に、賃借権相続の一般的な話からお願いします。
A 賃借権も1つの財産権ですから、使用賃借の場合と違って、借主が死亡しても契約関係は終了せず(民法597条(3))、相続の対象になります(民法882条、896条)。したがって、借家人の妻がその賃借権を相続するのが一番スッキリするのですが、その残された妻の経済力の問題もありますので、そのような場合には、他の相続人の誰か(例えば、長男か長女)が共同相続人となり、共同借主として、同居するということも考えなくてはなりません。
Q そうすると、その場合の相続というのは、他にも相続人がいる場合にはどういうことになるのですか。
A 相続人が複数いる場合には、原則として法定相続分による相続人全員の共同相続ということになります(民法900条)。したがって、それらの共同相続人による遺産分割協議が終了するまでは、共同相続人間において賃借権の準共有関係が生じ(民法264条)、全員がその持分に応じた使用収益権を取得することになります。しかし、相続した物件の賃料債務については、判例上不可分債務(民法430条)となり(大判大正11年11月24日)相続人全員が各自賃料の全額を支払う義務を負うことになります。そしてその場合に、共同相続人の誰かが賃料の全額を支払えば、他の相続人はその支払義務を免れることになります。
Q そのためにも、死亡した借家人の妻が高齢だったりした場合には、相続人の中の誰かが共同相続人となり、借家人の妻と同居する必要が出てくるわけですね。
A そういうことです。その場合、例えばその相続物件の財産的価値が極めて高いということで共同相続人間で争いが生じることも考えられますが、そのような場合には、現に入居している借家人の妻の意向を尊重すべきなのではないでしょうか(東京地判昭和28年11月24日)。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















