古民家宿の物語 日本全国リノベーション 12 宮崎県高千穂町「神楽の館」 (上) 夜神楽を守るために隣町から移築
住宅新報 2022年8月23日 号 11面

外観からは古民家とは判断しにくい
山小屋のような外観
「神楽の館」は山の中腹にあり、展望が素晴らしい。丘の棚田と深い谷、遠くの山々が一望できて、雄大な景観を楽しませてくれる。そのすぐ近くに温泉も併設されていて、歩いても行ける距離。古民家宿の十数台が止まれる駐車場は、3室しかない規模からいって不釣り合いなほど広い。これに意味があることを後で知った。
さて、古民家宿の建物だが、外観が現代的な白い外壁になっていて、最初は古民家だとは分からなかった。間違った場所に来たのではないかと思ったほどだ。ひょっとして、近隣に別棟があるのかと、取りあえず話を聞きに中に入った。すると、中は確かに古民家ではないか。黒くて立派な太い柱や梁(はり)が備わっている。
明治3年の建物を移築
建物は元々別の場所にあったものを移築して、外壁を新しく補強したそうだ。隣町の日之影町という場所から解体して運んだのだ。明治3年に建てられたものだったが、道路造成のために解体されると聞き、五ヶ村の村おこしグループが譲り受けたのがきっかけだ。五ヶ村とは、天岩戸神社がある岩戸地区の中の集落で、標高340メートルから550メートルまでに農地や民家が点在している。5つの小集落で五ヶ村集落を構成している。
村おこしは、先に温泉施設ができたのが始まりだった。平成2年に源泉が発見され、同6年に温泉施設が開業。更に意欲のある9名で村おこしグループを立ち上げた。当時メンバーは60歳前後だった。
夜神楽の場所が重要
この地域は、夜神楽や神話伝説で有名な場所だ。特に夜神楽は太古の昔から伝わる高千穂町独特の伝統文化だが、継承者問題、夜神楽を奉納する『神楽宿』の問題から年々開催が難しくなっていた。
最終的には、夜通し舞う夜神楽ではなく、簡略化した日神楽にしようという案があったそうだ。「私たちが生きている間にしっかりせねば、地域そのものがなくなってしまう」とメンバーの1人は、当時の危機感を振り返る。そこで日之影町の大きな屋敷を自分たちで移築し、平成11年にこの『神楽の館』が完成した。そして平成14年に民宿がスタートしたのだ。
宿=「神楽の館」
住所=宮崎県高千穂町
ウリ=夜神楽の実際の場所を見られる






















