不動産取引現場での意外な誤解 賃貸借編172 老朽建物の賃貸時の修繕特約のポイントは?
住宅新報 2022年8月23日 号 11面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 前回掲載された、老朽建物の賃貸借に関する貸主の修繕義務に関する判例を読むと、基本的には、貸主には賃料に見合うだけの修繕義務しかないと言っているように見えますが。
A 基本的にはその通りです。したがって、築年数が相当経っている老朽建物を賃貸する場合には、「貸主には大規模修繕義務はない」ということを、念のため賃貸借契約書に明記しておく必要もあるということです。
Q ということは、小修繕や中修繕といわれている修繕については、貸主に義務があるということでしょうか。
A 必ずしもそういうことではありません。一般的な老朽建物の賃貸借においては、現状有姿で賃貸し、一切修繕をしないというのであればともかく、貸主のほうとしても一応は建物として使える状態にして賃貸に出すでしょうから、あとは建物を引き渡した後に発生した故障・破損等をどうするかということが問題になってくるわけです。
Q そうすると、その点についてはどういうことになるのでしょうか。
A その点は、通常の建物賃貸借契約の場合と同じような基準で考えたらよいと思います。つまり、いわゆる「小修繕」といわれるような、例えば電球・蛍光灯・ヒューズの取り替えなど、いわゆる消耗品といわれているものについては、借主の負担で借主自身が修繕するようにし、それ以外のいわゆる「中修繕」といわれるものは、原則として貸主の負担で貸主自身が行うものとします。しかし、借主の使い方にも問題があると判断される場合には、原則として費用を折半した上で貸主が修繕するというような基準で、できるだけトラブルが生じないように取り決める必要があると思います。
Q ところで、民法の債権法改正で、地震などの影響で建物の全部または一部が使えなくなった場合の規定を設けたということですが。
A それは、賃貸中の建物が、地震などの借主の責に帰すことができない事由によってその一部が滅失したときは、その使用収益ができなくなった部分の割合に応じた賃料が当然に減額されるという規定です(民法611条(1))。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















