増えるタワマン 大規模修繕の体制づくり急務 官民挙げて課題探る
住宅新報 2022年7月12日 号 1面
商機拡大の好機か〝修繕難民〟リスクか
東京カンテイによれば、最高階数20階以上の分譲マンション(タワマン)のストック総数(21年末時点)は1427棟・37万5152戸。全国で棟数が最も多いのは東京都(458棟)で、大阪府(255棟)、神奈川県(139棟)と続く。築10年以内は477棟・13万7656戸で、マンションストックの中でも比較的築浅の割合が高い。
国土交通省は6月17日、21年度マンション大規模修繕工事実態調査の結果を公表した。17年度に次ぐ2回目の実施で、直近3年間で受注した大規模修繕工事の施工業者等を対象(200社818件)にしたもの。今回初めてタワマンに関する調査も行い、工事の受注実態や課題を明らかにした。具体的には、タワマンの大規模修繕工事受注件数は全体の5.5%(グラフ参照)。受注事業者の大半は1回目の修繕経験にとどまる。事業者にとっては工事の難易度が課題であり、同調査でも「仮設工事」「外壁塗装」「施工計画全般」が上位に挙げられる。特にタワマンの仮設工事は工事金額の約3割(タワマン以外では21.9%)を占めており、金額面からも事業者の計画力を問う要素だ。
タワマンの大規模修繕について国交省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付は、「規模の大きさはあるが、他のマンションと考え方は同様。管理計画認定制度の活用等を促進し、管理の適正化につなげる。まずは修繕実態を把握し、タワマンの大規模修繕に関わる課題や対応策を共有したい」との姿勢を示す。
「課題は計画力」
清水建設子会社のシミズ・ビルライフケアは約70棟のタワマン大規模修繕実績を持つが、同社リニューアル事業本部の原章博副本部長は仮設足場を課題に挙げる。同社が2年の工期をかけて17年2月に完了した「エルザタワー55」(埼玉県川口市)は、185メートルの高さと低中高層で複雑に変化する外観が特徴。通常の枠組み足場と移動昇降式足場、ゴンドラを組み合わせたハイブリッド型で対応。居住者の車両と工事車両の動線を切り離す案や子供向け説明会の開催などソフト面の工夫も評価を得たという。
原氏は「いかに合理的に仮設工事を計画し、無駄なく作業を進めてコストを削減できるかが重要」と述べ、建物の形状と改修工事の内容から最善の工程をマンションごとに見極める必要性を説く。同社は近年、大阪圏をはじめ、東海地方や北海道へ対応エリアを拡大。原氏は「積み上げたノウハウを基に全国展開を目指す。大規模修繕で差別化を図るため、人員体制強化も含めて推進する」と意気込む。
「100年先」提示へ
同社も加盟するマンションリフォーム推進協議会(REPCO)は、事業者の技術研修や市場調査などを通し、適切なマンションリフォームの推進を目指す。総務委員会の桑原千朗委員長はタワマン特有の課題として立地条件に着目。「比較的湾岸に多く、風や紫外線等の影響からシーリングの劣化が進みやすい。排水管の構造も複雑で、更新時期に工事がうまく進められるか」と今後の課題を示す。
REPCOは、「あなたのマンションを100年先へ」というスローガンの下、マンションの持続可能性を追求する。新耐震基準のマンションが3回目の大規模修繕時期に近づく今後を商機とにらむ。他方、「管理組合の3割が修繕積立金不足」という調査結果も踏まえて注力するのが、100年後のマンション活用の工程を示す取り組みだ。建物躯体の耐久寿命を示し、修繕の長周期化を支える高耐久仕様に改修すると共に、その後のメンテナンスが不要となる手法やライフサイクルコスト軽減策を提案する。国や地方自治体による補助事業を徹底活用し、管理組合の需要を獲得するというものだ。
桑原氏は、REPCO会員企業が「マンション・バリューアップ・アワード」部門賞を受賞した事例を紹介。高経年マンションの管種の異なる共用部分排水管全体を一斉樹脂化した工事は長寿命化への試みとして評価され、「付加価値によって経年マンションをビンテージ化するためのコンサル力が一層求められる。100年先を考える入り口にいる」と前を向く。
前述の国交省調査では、タワマン大規模修繕の受注実績が「ある」としたのは約30社。「ない」とした事業者の理由として、管理会社系は「事業対象ではない」、専門工事系では「大規模修繕工事の施工経験がない」が目立った。今後の受注に向けて「対策はしていない」が約4割と最も多く、対策済みの事業者も「タワマンの修繕実績がある施工会社(下請け協力会社)と連携」や「修繕技術に関する社員教育」がそれぞれ2割にとどまる。修繕工事体制の構築や工期短縮、工事費削減に向けた研究など業界を挙げた取り組みが急務だ。成長市場に育つか、〝大規模修繕難民〟を生むリスクとなるか、関係者の本気度が問われている。
























