物流不動産ビジネス ケーススタディ 倉庫ドクター・コンサルの現場から 第1回 不動産業に〝物流〟を取り入れる イーソーコ総合研究所代表取締役 出村亜希子
住宅新報 2022年4月19日 号 7面

イーソーコグループは東京芝浦にある創業から100年を超える老舗倉庫会社をルーツに持ち、倉庫業に不動産業を取り入れた「物流不動産ビジネス」を構築してきました。このビジネスは物流業と不動産業の融合によるシナジー効果で、足し算ではなく掛け算の付加価値を生み出します。
ターニングポイントは01年に物流を管轄する運輸省と不動産を管轄する建設省が合併して国土交通省が誕生したことです。合併後に入省したキャリア官僚には運輸と建設のセクショナリズムがありません。彼らが国交省の中核になるにつれ、物流業と不動産業の垣根は取り払われていきました。また、政府日銀による金融緩和で物流不動産ファンドによる先進物流施設の供給が進むなど、環境は大きく変化しました。
一方、中小物流会社が所有するビンテージ倉庫や配送センターは、都市化された周辺立地に準じた活用がなされていないものが数多く存在します。従来の物流用途に加え、都市型賃貸倉庫、オフィス、スタジオなど様々な有効活用の可能性を秘めています。
私たちは総合ソリューションによる物流不動産ビジネスの業界化を目指しています。中小の物流業者は自社アセットの有効活用のほか、情報産業である不動産業の考え方を取り入れて収益の多様化を図ることができます。不動産業も物流業のエッセンスを取り入れることでビジネスチャンスが広がることでしょう。
コロナ禍で〝人〟の移動が減少しましたが、その分EC(電子商取引)等による〝物〟の動きが活発化しています。この連載が皆様の新規事業のヒントとなれば幸いです。
体積で考える
当社に自動車部品メーカーから「東京都東部で1000坪の倉庫を探してほしい」という仲介の依頼が入りました。現在運用している拠点で荷物量が増えたため、新たに近くで倉庫を借りたいとのことでした。
不動産の観点からは、当該エリアで1000坪の賃貸倉庫を探すだけです。しかし、依頼主が希望する近隣に賃貸の空き倉庫はありませんでした。近くの倉庫会社に掛け合い、倉庫内の荷物を段積みしたり、他倉庫に移動(再寄託)したりして1000坪の空きスペースを生み出してもらい、賃貸することができました。
不動産では空間を面積(平方メートル)で捉えるのに対し、物流では体積(立方メートル)で考える違いがあります。倉庫の天井高が高いのは荷物の保管効率を高めるためです。荷物を段積みすることで、スペース(平方メートル)を生み出すことができます。また、物流業において倉庫は手段であり目的ではありません。そのため、倉庫の保管の寄託貨物は自由に移動することができるのです。
物流不動産ビジネスの基本収益は一般の不動産業と同様、賃貸や売買の仲介です。倉庫物件を借りたいお客様に空きのある倉庫を仲介し、手数料を得ます。しかし、物流不動産ビジネスの醍醐味(だいごみ)は仲介だけにとどまらないところにあります。
倉庫内の荷物を移動して、ニーズに合ったスペース(平方メートル)を生み出すことも、物流業務のアウトソーシングの提案を行うことも可能になります。お客様の賃貸ニーズを把握することで経済合理性から物流ニーズへの変換提案を行い、保管料、入出庫料、物流加工の作業費といった倉庫業の収益を加えることもできます。物流との連携で、提案の幅、収益の幅が格段に広がるのです。
でむら・あきこ=富山県出身。奈良女子大学大学院修了。一級建築士、宅地建物取引士。不動産コンサルティングマスター。15年より(株)イーソーコ総合研究所代表取締役。著書に『築古[ビル・倉庫]のリノベーション・コンバージョン計画実務資料集』(綜合ユニコム(株)・共著)






















