沖縄復帰50年(下)占領が生んだ軍用地取引 官製相場に安心感も土地転がし懸念〝融資に待った〟 評価倍率もう一段高の様相 返還見込みない土地が人気
住宅新報 2022年2月8日 号 3面

米軍基地内に軍人・軍属の住宅も整備している
借地料は上がり続けている。2002年に嘉手納飛行場の1m2当たりの借地料は約1319円だったが、20年には約1641円と20年間で約25%の上昇率になった。土地の評価額は右肩上がりで推移している。嘉手納飛行場で見ると、13年時に借地料ベース35倍で100m2当たり約513万円で取引されていたが、そのまま保有を続けていま売れば730万円を超える。
複数の軍用地投資家は、「この軍用地の評価倍率をもっと上げるべきだ」との声が金融機関から昨年上がっていたと明かす。地元の銀行が50倍とする中で農協系の金融機関が軍用地を担保とする融資基準を55倍に引き上げたところ申し込みが殺到したという。
「あまりに殺到したため、新規で軍用地を購入する人への融資は取り止めとなり、既に保有している地主には、軍用地を担保に融資しましょう、との姿勢に変わった」(沖縄の地主)。銀行の営業現場としては、貸し出し残高が増して成績が上がるとの誘惑に駆られそうだが、前述の殺到を見て踏みとどまったとされる。銀行がその動きに追随していればもう一段の高倍率になっていた可能性を指摘する声もあるが近く60倍に達するのではとの臆測も飛び交う。
場所により評価額に差
「軍用地を転がせばもうかる」。そうした話を聞き付けた日本本土の不動産事業者や個人投資家が積極的に買い付けてきたが、19年11月頃に本土向けの融資を停止した。市場に出ている土地を買い占める不動産事業者が増え、銀行が「土地転がしに待った」をかけた。軍用地取引に詳しいミウラオキナワ合同会社代表の三浦弘人氏は、「内容次第で審査は可能となっているが、基本的に銀行は本土の人には融資できないとの回答になっている」と話す。
沖縄軍用地人気に地主会も対応に追われている。相続や小口化販売などで土地の分筆が進んでいることで地主が増加の一途をたどっており、嘉手納町軍用地等地主会は21年4月1日から330m2以下の地主について新規入会の受け付けを停止した。事務作業の増加でマンパワーが追い付いていかないためだ。これに追随する地主会が出ないか心配する個人投資家もいる。
地主会に入れない小規模の地主は、防衛省に直接届けを出す必要がある。前述の三浦氏は、「届け出書類の手続きは簡単。ただ、借地料を防衛省が一人ひとりに振り込みをする手続きとなるため、地主会にまとめて振り込む時期より3~4カ月遅れが生じる。地主会に入っていれば、借地料は通常7月に1年分が振り込まれ、上昇率分が3月に振り込まれる」と説明する。
地主会に入っていなければ会費を払う必要がないメリットはあるものの、銀行としては、個々の借地料の入金状況を把握しやすいことで地主会に未入会の場合は融資審査が厳しいとされる。
だが、土地を小口化すれば早々に売り切れる。軍用地取引に衰えは見えない。むしろ少しでも投資妙味がある土地を探す動きが活発化している。軍用地と一口に言っても借地料は異なるためだ。
借地料は毎年平均で1%ずつ上昇しているが、個々の土地をみると借地料の上昇率が0.3~0.4%にとどまる土地もあれば3%台の上昇率を見せる土地もある。
嘉手納町軍用地等地主会は、「借地料に格差が生じている」と地代の考え方の相違により、沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)を15年に退会しており、その考え方に今も変わりはないといい、土地連から退会したままだ。
返還後の収益力も探る
沖縄本土復帰50年。自ら土地を使うことができず瑕疵担保も地区計画もない不動産取引の概念を有していない土地を取引する。思いやり予算をを使い借地料が前年より上がることが〝約束〟された官製相場が評価額を押し上げる。
そうした中で、基本的に日本に返却見込みのない土地は人気だ。例えば嘉手納基地や那覇空港、自衛隊が使用している土地などである。特に宅地見込み地の評価額が高い。 返還予定地は、将来的に市場原理にさらされると認識され、銀行の担保評価額も下げに転じやすいため人気は今ひとつとされる。とは言え、返還予定地であっても、再開発計画など街の復興に向けてのマスタープランがあるかどうかで値踏みされ、土地の収益化を描けている返還予定地は高値取引の対象だ。普天間飛行場や浦添市などの返還予定地は人気が高い。






















