不動産現場での意外な誤解 賃貸借編156 借主が差し入れる敷金と保証金は同じものか?
住宅新報 2021年11月9日 号 13面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q テナントビルの場合には、敷金の代わりに「保証金」という名目で金銭を預かるケースがあります。これも民法622条の2でいう「敷金」になるのでしょうか。
A この保証金が、借主の貸主に対する債務の担保として預けたものであればなりますが、そうではなく、例えばその保証金を何年間か据え置き、その後に返還するというような形になっているのであれば、それは一種の借主から貸主への「貸付金」ということになると思います。別名、「建設協力金」とも言われています。
Q ということは保証金という名目であっても、それが担保のためであれば、「敷金」ということですね。
A その通りです。したがって、保証金を賃料保証(担保)のための金銭だということで「保証金」という名称にしたり、テナントビルの場合には、「敷引き」という用語がなじまないということで保証金という名称にした上で保証金の「償却」という用語を使っているというオーナーもいます。
Q 「敷金」と「貸付金である保証金」の違いはどこにあるのでしょうか。
A 端的に言えば、建物が第三者に譲渡されたときに、その返還債務が新所有者に承継されるか否かで異なるということです。具体的には、「敷金」であれば、その返還債務が新所有者に承継されるのに対し、「貸付金」であれば、その返還債務は新所有者に承継されませんので、その譲渡(売買)の段階で清算する必要があるということです(最判昭和51年3月4日)。
Q 両者には法的にかなりの違いがありますね。
A はい。一方が「預託金」で、他方が「貸付金」ですから、当然といえば当然のことなのですが、そのほか建物の譲渡(売買)の際に知っておくべきことは、その新所有者に承継される「敷金」は借主の未払債務が当然に控除された残額だけなのですが(最判昭和44年7月17日、民法622条の2)、そのことは、その建物が譲渡されたときの規定である民法605条の2にはなんら定められていないということです。これは、賃貸ビルが居抜きで売買されることが多い今日においては、これらの細かいことは取引する当事者に任せておいたほうがよいということで、そのようになっていると言われています(同605条の2(2)(4))。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















