明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第408回 松並木の景観と色彩 規制誘導も塗装は対象外に
住宅新報 2021年11月9日 号 4面
【学生の目】
獨協大学前駅は松原団地駅を名称変更して生まれた。近くには副駅名の草加松原が示す松並木があり、愛犬と散歩でよく利用する。松の幹は立冬に菰巻きされて腹巻をしているように見えるが、冬の訪れと同時に、伝統的な手入れに風情を感じる。松並木は、松尾芭蕉の『おくのほそ道』に関連する風致景観の一つで、国指定の名勝地として知られる。毎日多くの市民が散歩やランニングに利用し、憩いの場としても人気スポットである。松並木の横を流れる綾瀬川に架かる橋からは、規則正しく並ぶ緑が視界に入って心地よく、水空間特有の開放的な眺めと一体化して、とても癒やされる。
自然と足を止めてしまう景観が実現されている理由に興味を持ち、その背景を調べた結果、景観計画で規制誘導していると分かった。歴史・文化・伝統の景観ゾーンとして景観づくりを試み、松並木のスカイラインを阻害しないよう、橋からの眺めを確保している。成果は眺めにとどまらない。一直線に並んだ石畳が松並木の緑に映えることに加え、両者が一体となった奥行き感に誘われて歩みを進めたくなる。
美しい景観で気になる点があった。ひときわ目立つ、明るいピンク色の賃貸住宅が視界に入ることだ(写真)。川に面する建物はどれも白やベージュなど控えめな色彩のため、存在感は強烈だ。
景観計画では、景観づくりのために届出制を採用し、大規模建築物に対しては景観基準と色彩基準、小規模建築物に対しても色彩基準が適用される。小規模であっても10m2以内の新築、増築、改築以外は届出の対象で、この限りでピンクの塗装は不適格となる。しかしよく見ると、色彩基準の適用は新築、増築、改築の建築工事を伴う場合に限られ、塗装の更新工事は対象外で、ピンクの外壁への塗り替えは適格である。
塗り替えのすべてを届出制とすると社会的コストが増えるかもしれないが、実態をみると、色彩基準に合致しないものの違法でも脱法でもない建物が次々と出現する可能性が否定できず、せっかくの景観計画が骨抜きにされかねない。
事前届出が困難ならば、利用すべき色彩を示したうえで、逸脱した工事に改善命令を出すなど、事後的に対応する方法が考えられる。ストック時代にふさわしいルールに見直すことが、市民が守りたい絵はがきのように美しい松並木の景観の維持向上につながるのではないだろうか。 ※「草加市景観計画2020-2035」冊子参照
【教員のコメント】
新築、改築、増築等を契機として建築や都市を規制誘導する手法は建築行為が社会をけん引するフロー社会で有用な一方、更新改修行為によって建物を長期利用するストック社会では機能しない側面がある。建築行為に限定しない建築基準が必要だ。
























