大手住宅メーカーのシェアオフィス戦略、独自ノウハウに強み
住宅新報 2021年10月26日 号 1面
積水ハウスG「ビズスマート」
積水ハウスグループが16年から展開するシェアオフィス「BIZ SMART(ビズスマート)」。第1号物件の「神田」(東京都千代田区鍛治町)から最新の「青山」(東京都港区北青山)まで東京都内に5拠点を展開する。個室やコワーキングスペースなどを備え、法人登記も可能で、椅子や机を標準で装備している。入居率は物件によって異なるが7~9割強となっている。
「ビズスマート」を展開・運営する積水ハウス不動産東京は、特有の強みとして「初めからシェアオフィスとして建築する」(稲垣陽子事業開発部開発1課長)点にあると言う。一般的なシェアオフィスは、オフィスビルの一角をシェアオフィスに改装するが、同社では建物を設計の段階からシェアオフィスとして設計する。そのため、プライバシーを重視した完全個室を実現し、個室の空調をすべて個別調整可能にするなど入居者の居住性を向上させる。
賃貸住宅と同様に、土地の有効活用という観点から立地特性や収益性などを検討して「ビズスマート」を土地所有者に提案する。
「ビズスマート」は、賃貸住宅以外の新たな土地活用の提案を行う新規事業としてスタートした。1号物件は、事業のトライアルという性格もあり、土地・建物共に、積和不動産(現・積水ハウス不動産東京)が所有している。最新の「青山」は、1~3階までを「ビズスマート」に、4~7階を賃貸住宅とし、道路に面した敷地に時間貸し駐車場を設置し、土地所有者の収益性を上げる。
積水ハウスと連携しながら事業を行っており、賃貸住宅などと同様に土地所有者の情報の共有や、建物の建築を積水ハウスが行うなどグループシナジーを生かした事業展開を行っている。
また、コンシェルジュサービスや入居者との契約形態に関しても賃貸住宅管理で培ったノウハウが生かされている。
今後の事業展開について、土地所有者への提案による拡大であるため、事業性を重視する。同社の事業エリアである首都圏のターミナル駅周辺での展開となる。新型コロナで、シェアオフィスへの需要が拡大しているが、コロナが収束した後の需要が読めないことから「立地をしっかり見極める」(同)としている。
大和ハウスG「MID POINT」
大和ハウスグループのコスモスイニシアは、シェアオフィス「MID POINT(ミッドポイント)」を展開。「目黒不動前」(東京都品川区)を18年に開業し、東京都と神奈川県に5カ所を運営する。「ミッドポイント」は、住宅立地に特化し、職住近接を求めるフリーランスやスタートアップ企業をターゲットとしている。完全個室やブース、コワーキングスペースのほか、キッチンやバーカウンターを設け、入居者同士のコミュニティ形成を支援するコミュニティマネージャーが常駐する物件もある。
住宅立地の特化は、事前の周辺調査を綿密に行うことで「他のディベロッパーができないところで展開できる」(野見山亨賃貸事業部運営二部部長)という強みを発揮する。コロナの影響で、自宅近くでのテレワークニーズが増加し、個人利用の会員が増えたと言う。
大和ハウスグループとしてのシナジーは、土地所有者の情報共有のほか、「横濱関内」(神奈川県横浜市中区)の事業化に際して、土地所有者と協議してグループで運営するコインパーキングの設置を提案し、収益性を向上させるといった提案力に厚みを持たせている。「川崎」(神奈川県川崎市幸区)は、大和ハウス工業が所有するビルにテナントとして入居する。
同社は10月からMID POINT推進課を立ち上げ、人員も6、7人から10人体制に強化した。
シェアオフィスの市場は今後、どのようになっていくのだろうか。ザイマックス不動産研究所によれば、シェアオフィスやコワーキングスペースなど「フレキシブルオフィス」は、東京23区のオフィスストック(1300万坪)の約1.5%を占めている。ワーカーの職住近接のほか、個室や安心安全への配慮などのニーズにより、今後は「フレキシブルオフィス」が継続的に増加すると予想する。
拡大に課題、職住近接ニーズつかめるか
大手住宅メーカーによるシェアオフィスの展開は、自ら建物を設計・施工できるほか、賃貸住宅で培った個人の土地所有者への提案ノウハウといった強みを持つ。一方、展開拡大の難しさや、オフィス運営ノウハウの蓄積といった面での課題も残る。今後、住宅企業がシェアオフィスを拡大する上で、職住近接ニーズをいかにつかむかで競争力が左右されそうだ。
























