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プレミアム会員限定源泉数・湧出量が全国1位の温泉観光都市 変化に応える不変の資源 一般財団法人日本不動産研究所 ニューノーマル最前線 不動産の〝変〟と〝不変〟 第23回 大分県別府市

住宅新報 2021年10月19日 号 20面

連載: ニューノーマル最前線

総合
  • 人気の観光スポット「海地獄」

    1 / 3人気の観光スポット「海地獄」

  • 市内に開設された地熱バイナリー式発電所

    2 / 3市内に開設された地熱バイナリー式発電所

  • M&Aによって引き継がれた「鉄輪豚まん本舗」

    3 / 3M&Aによって引き継がれた「鉄輪豚まん本舗」

 大分県別府市は、源泉数および湧出量が全国1位の温泉資源を有する温泉観光都市である。また、泉質の異なる「明礬(みょうばん)温泉」「鉄輪(かんなわ)温泉」など「別府八湯」と呼ばれる温泉郷がある。明治時代には、自然湧出に頼っていた温泉資源が温泉掘削技術の導入により、各温泉郷が温泉観光地として発展する契機となった。「海地獄」のほか6つの地獄を称し、「別府地獄」と呼ばれる人気の観光施設がある。

 「地獄」とは、1000年以上前から、100度程度の噴気や熱泥が噴出している温泉噴気口のことであるが、昔は近寄ることのできない忌み嫌われた土地であったため「地獄」と呼ばれていた。しかし大正時代には、千寿吉彦が「海地獄」を買収して、湯治客を対象に見学料を徴収したことから観光地として、また別荘の温泉源として再生させた。

 昭和時代には、「別府観光の父」と呼ばれる油屋熊八により、日本で初めてのバスガイド付き観光バスで地獄めぐりが始まった。その後、各温泉郷で温泉旅館・ホテル、遊園地など観光施設、温泉付き別荘等の開発が進んだことで、湯治を目的としていた温泉郷が観光地へと変化し、現在の温泉観光都市が形成された。

 令和の時代には、日韓関係の悪化や世界的な新型コロナウイルス感染症の影響でインバウンドのほか国内観光客が激減する中、建物の老朽化もあり老舗温泉旅館の廃業が続いた。しかし一方では、「明礬温泉」付近に「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」、「別府温泉」内の老舗・花菱ホテル跡地に「星野リゾート 界 別府」など高級ブランドのホテルがオープンしており、新型コロナウイルス感染症の収束後には、国内だけでなく世界的な観光機運の高まりへの期待がある。

地熱を生かした再エネの発電所

 現在、国連では「SDGs」を掲げており、日本政府は、「エネルギー基本計画」で2030年度の電源構成について再生可能エネルギー割合を36~38%とする方向で調整を進めている。再生可能エネルギーの一つである地熱発電(地熱バイナリー発電)は、80~150度の熱水や蒸気を熱源として低沸点の媒体を加熱し、蒸発させタービンを回して発電する方式である。

 近年、一般家庭約700世帯分の年間電力消費量を発電することができる地熱バイナリー式発電所が別府市内に開設されたほか、周辺の宅地開発分譲地域においても、使われなくなった余剰蒸気を活用した地熱バイナリー式発電所が増加している。昔から人々を癒やしてきた温泉は、時代と共に利用の形態が変わっても、地球環境に優しい資源として利用されていくであろう。

 最後に、現在も湯治宿が多い「鉄輪温泉」にある小路に、温泉の蒸気で蒸した地元グルメの豚まんを約20年販売していた「鉄輪豚まん本舗」が後継者不在等で廃業を検討したが、屋号やレシピはそのままに、M&A(企業の買収・合併)により引き継がれることとなった。これもニューノーマル時代における別府という温泉都市の歴史と文化を将来につなぐ架け橋の一つと思う。

(大分支所/不動産鑑定士・上治昭人)

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