世界文化遺産登録が決定した縄文遺跡 次世代、各方面に魅力発信 一般財団法人日本不動産研究所 ニューノーマル最前線 不動産の〝変〟と〝不変〟 第17回 青森市・三内丸山遺跡
住宅新報 2021年9月7日 号 12面
連載: ニューノーマル最前線
本年7月27日、第44回世界遺産委員会拡大会合において、青森市の小牧野遺跡と三内丸山遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産登録に決定された。当該遺跡は、1万年以上にわたって採集・漁労・狩猟により定住した人々の生活と精神文化を伝える17の考古遺跡である。
県外からの観光客も
三内丸山遺跡は青森県、青森市、関係団体、地域住民が遺跡の保存・魅力発信等を積極的に行い、世界文化遺産登録を達成した。青森駅や市中心部から車で約20分、新青森駅からバスで約15分、青森空港からバスで約35分と、交通の便はよく、隣接する青森県立美術館との回遊性も良好で、一日ゆったりと両施設を観賞できるスポットとして、東京や仙台市から当該施設を主たる目的に旅行する観光客が多いと聞き及ぶ。
青森県立美術館は三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得て、設計・建築された。余談ではあるが、県内では有名な美術館が多く、十和田市現代美術館や弘前れんが倉庫美術館も大変人気が高い。
三内丸山遺跡に話を戻すと、発掘作業や保存活動により遺跡はよみがえったが、遺跡そのものは縄文時代から変わらない。変わらない遺跡をどうやって次世代に伝えるかは、変わっていく各世代の知恵や工夫を凝らした努力による発信力等のソフト・ハード両面の要素がある。上記交通機関の協力により主要駅からバス便が運行し、ハード面が整備された。
ボランティアが活躍
ソフト面では、地元ボランティアガイドによる1時間ごとの定時ガイド、小中高生の校外学習等の団体向けガイド(10名以上)があり、常設展・特別展を案内している。
体験工房を通して縄文時代の物づくりを楽しめ、縄文シアターで分かりやすく映像で説明し、実際の発掘調査現場の見学や縄文学の講座も開催され、三内丸山遺跡センターや地元ボランティアガイドを中心に県や市、関係団体が強力な後ろ盾となり支えている。
インターネット社会において、若い世代を中心にどう関心を持ってもらえるかはホームページの最新版の更新から始まり、現在のコロナ禍における感染対策等を行いつつ、複数の公式SNSを新たに開設し、縄文遺跡に触れる窓口を増やし、ソフト面の充実を図り、変わりゆく世代に変わっていくツールで発信力を高めている。
地価にプラス効果
当該遺跡や美術館等をはじめとした公園整備が進むものの、周辺地価への影響はわずかにすぎないと予想されていたが、コロナ禍前の地価の変動率は、0%から若干の下落にとどまった。青森市内の郊外の住宅地が依然大きく下落する中で、周辺地域に対するプラス効果が読み取れる。県が発表した観光入込客数は、隣の県立美術館ではあるが、コロナの影響を受けた前年より回復し、コロナ禍前の水準を超える時期もあり、他の観光地区より回復が早いように見受けられる。
また、東京パラリンピック聖火の採火式および集火式が青森県内で行われ、採火された火は三内丸山遺跡に集められ青森県の聖火として、三沢市を経由して、東京に向かった。今後も変わることのない遺跡として、遺跡文化を全く趣の異なるスポーツ等の各方面や各世代に発信し続け、周辺地域や青森市、ひいては県内に新しい風を吹き込んでくれることを期待したい。
(青森支所/不動産鑑定士・橋本一憲)
























