点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第48回 地震に備え、防災・減災社会を目指す 静岡県浜松市 津波から街を守る防潮堤
住宅新報 2021年4月20日 号 12面
連載: 点検 不動産利活用
11年3月11日は、我々日本人にとって決して忘れることのできない日として、今後も人々の記憶に残り続けるであろう。今年は東日本大震災からちょうど10年の節目の年になるが、今なおその余震も続いているため、決して終わった過去のことではない。
静岡県は昔から、東海地震の想定震源区域にあるため、他の都道府県に比べて地震への備えは進んでおり、人々の防災意識も高い。そのため東日本大震災は決して他人事ではなく、明日は我が身という意識をかなり強く持ったと思う。
浜松市は静岡県の西部に位置する人口約80万人の政令指定都市である。浜松市は東日本大震災を受けて、これまで地震そのものへの備えはある程度行われてきたと思われるが、津波への対策は必ずしも十分だとは言えなかったため、津波対策が急務となった。実際に浜松市の南側は広く海に面しており、海岸からそれほど遠くない所に市街地も広がっている。
そこで浜松市と静岡県は、東日本大震災の翌年となる12年に防潮堤の整備に取り組むことになった。防潮堤の建設には多額の費用が掛かるが、その費用を賄うため、大手ハウスメーカーである一条工務店が300億円を寄付したというのが当時大きな話題となった。
一条工務店は非上場企業であり、またテレビCMを一切行わないため、他のハウスメーカーと比べると知名度は高くないが、全国で戸建て住宅の建築を中心に事業を行う会社である。一条工務店の本社は東京だが、浜松にも本社機能があり、創業がこの浜松の地ということでゆかりがあったようである。その1社の多額の寄付が発端となり他の地元企業からも寄付が集まり、官民一体となった防潮堤の建設にいち早く着手することにつながった。
その防潮堤が20年3月に完成した。総工費約330億円、高さ約15メートル、全長約17.5キロの大事業であった。この官民一体となったオール浜松で実現した防潮堤の建設は「浜松モデル」として注目され、20年3月末時点において全国から1113団体、3万1498人の視察があった。
浜松市は07年に政令指定都市となって以降、人口は緩やかな減少傾向にあり、直近では人口80万人をやや下回っている。特に東日本大震災以降、津波による浸水を懸念して、沿岸部は人口の減少および地価が下落し続けている。
地価への影響に期待
近年、市内中心部の住宅地域や高台の住宅地域における地価は上昇傾向にあるが、沿岸部の地域は地価の回復が遅れているため、今後この防潮堤の完成により、津波が発生しても浸水被害が軽減されるということが人々の意識として植え付けられれば、当該地域の住宅需要が回復し、地価の下げ止まりも期待できる。
浜松市沿岸部の地域は平坦であり、また、市内中心部への交通アクセスも良好なため、優良な住宅地として多く供給され、需要を喚起できれば市の人口減少の歯止めにもなる。防潮堤を生かし、持続可能な防災・減災社会を実現することで、持続可能な街づくりの大きな基盤となることを期待したい。
(浜松支所、不動産鑑定士・成瀬智也)

























