業界トップコメント 21年地価公示
住宅新報 2021年3月30日 号 3面
政策効果で持ち直し
不動産協会・菰田正信理事長(三井不動産社長) 今回発表された1月1日時点の地価公示では、全国平均は全用途で6年ぶりに、住宅地で5年ぶりに、商業地で7年ぶりに下落に転じた。昨年前半の経済の大幅な落ち込みから、各種政策の効果により後半には持ち直しの動きが見られたこと等が反映されたものと受け止めている。足元の我が国経済は、依然として非常に厳しい状態にあり、とりわけ企業業績のばらつきや、個人消費や雇用にも弱さが見られ、先行きも不透明な状況である。感染防止策を徹底しながら、経済活動を着実に回復させていくことが重要だ。
コロナ後を見据えた対策を
全国宅地建物取引業協会連合会・坂本久会長 地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なり、一部の交通利便性等に優れた住宅地などは上昇を継続していることから、アフターコロナを見据えた今後の対策の強化を期待すると共に、併せて22 年度も引き続き固定資産税の負担軽減を要望したい。また、全宅連不動産総合研究所が1月に実施した調査では、土地価格動向DIは全国が実感値でマイナス2.7ポイントとなり、前回調査から5.5ポイント改善。足元では確実な回復の兆しも見受けられている。
本会では、各種土地住宅税制特例の延長措置を実現し、更に土地の有効活用に向けた対策の提言活動を継続している。今後も適宜必要な対策の要望を行っていく。
更なる市場活性化を
不動産流通経営協会・山代裕彦理事長 既存住宅の流通市場は、営業現場で昨春に大きく落ち込んだ取引が6月以降は回復し、足元では堅調さを取り戻している。しかし、感染の収束はいまだ見通せず、景気は依然厳しい状況にある。経済の立て直しのためには、不動産の地価が安定的に推移することが欠かせず、内需のけん引役である住宅・不動産流通市場の更なる活性化が求められる。当協会は、顧客から信頼され満足いただける「安心・安全な不動産取引が実現する市場」と「多様なニーズが充足される厚みのある市場」の実現を目指して、不動産流通市場の活性化に鋭意取り組んでまいる所存であり、国においても引き続き税制・法制等の政策的支援をお願いしたい。
ポスト・コロナのまちづくりへ
三菱地所・吉田淳一社長 国土交通省によれば、新型コロナウイルス感染症の影響等により、全体的に弱含みとなっているが、地価動向の変化の程度は、用途や地域によって異なるとの見解が示されている。先般、1都3県の緊急事態宣言が解除された。依然として先行き不透明な状況が続くが、新型コロナウイルス感染症との共存を踏まえながら、経済活動を着実に回復させていく必要がある。当社グループにおいては、新型コロナウイルス感染症がもたらした本質的な変化を見極め、ポスト・コロナ時代のワークスタイルやライフスタイルに向けたまちづくりを推進していく。
小規模住宅の需要拡大へ
全日本不動産協会・原嶋和利理事長 21年地価公示では、コロナ禍の停滞状況がいまだ解消されていないことが示されている。半年ごとの推移に目を向けると、昨年7月以降、各地で下げ止まりまたは上昇を示すなど地価の改善傾向が見て取れるが、これらの数値は需要が堅調な優良地点によってけん引されていることから、景気の持ち直しと見るには尚早だろう。
21年度の税制改正大綱では、本会が要望してきた住宅ローン控除における床面積要件の緩和が盛り込まれ、今国会での成立が見込まれる。低金利環境の継続と相まって、若年世代からシニア世代まで幅広い購買層による小規模住宅の需要を後押しし、住宅全般の取引活性化につながることを期待している。
住宅地は小幅な下落
住友不動産・仁島浩順社長 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、入国規制や緊急事態宣言下の外出自粛等により、昨年前半は経済が停滞、後半は回復の兆候が見えながらも不安定な状況が続いた。こうした中、商業地は国内外の来訪客が大幅に減少し、店舗やホテルなどの需要減退により三大都市圏を中心に大きく下落した。一方、住宅地は在宅勤務などを機に住宅への関心が高まり、希少性の高い都心部や交通利便性に優れた近郊などで需要が堅調に推移し、全体では小幅の下落にとどまった。
都心商業地下落は一時的
東急不動産・岡田正志社長 住宅地については中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた近郊の地点では地価上昇が継続するなど、根強い需要がある。商業地では、特に東京・銀座や大阪・心斎橋などの地価下落はインバウンド需要で地価が過熱気味だった場所がコロナ禍による需要喪失で修正されている一時的な現象と捉えており、「AFTERコロナ」の段階でインバウンドは復活し、これらの地域の地価は回復すると見ている。オフィス関連では在宅勤務の広がりを受け、東京都心の代表的なオフィス街にある地点の地価が下落するなど影響が出ている。
足元の不動産市況は堅調
東京建物・野村均社長 今年発表された地価公示は、新型コロナウイルス感染症の影響により全国全用途平均で下落に転じた。しかし、堅調な住宅需要や再開発の進展を背景とした希少性・利便性に優れる一部地点では、若干の上昇もしくは横ばい基調も見られた。足元の不動産市況においては、立地・環境性能に優れるオフィス、交通・商業利便性の高い分譲マンション、EC拡大に伴う物流施設などの需要は引き続き旺盛である。今後については、引き続き、新型コロナウイルス感染の状況や景気動向等への注視が必要だが、ワクチン接種開始などが市場にポジティブに作用することを期待する。
重要指標として注視
野村不動産・宮嶋誠一社長 住宅市場に関しては、新型コロナウイルス感染症拡大を背景とした雇用・賃金情勢等の先行き不透明感による需要者マインドの低下が懸念されたものの、価値観やニーズの多様化による新たな需要の広がりもあり、新築・中古共に堅調に推移している。オフィス市場に関しては、空室率は少しずつ上昇しており、賃料については足元では大きな動きはないものの、コロナ禍による企業業績への影響の検証は継続していく必要がある。地価調査は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、今後も重要指標の一つとして注視していく。
オフィス、量より質
森トラスト・伊達美和子社長 商業地の地価は、全国平均で7年ぶりに下落に転じた。三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)の平均では8年ぶりの下落となった。時系列で見ると、20年の前半に価格が落ち込んだが、後半はほぼ横ばいとなっており、様子見姿勢が見られる。
地方圏の平均は4年ぶりの下落となったが、地方4市(札幌市、仙台市、広島市および福岡市)においてはオフィス需要が堅調であり上昇を継続した。オフィス賃貸市況においては、今後も交通利便性重視の傾向は変わらず、加えて「量」より「質」の傾向が強まる。






















