点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第38回 まちづくりに自然環境、出身者を生かす 鳥取県北栄町 不断の努力で豊かな農地に
住宅新報 2021年2月9日 号 16面
連載: 点検 不動産利活用
北栄町は、05(平成17)年北条町と大栄町が合併して誕生した町で、鳥取県中部に位置し、総面積約57平方キロ、人口は約1万4000人で、中心部の由良に町役場が置かれている。由良は山陰道(伯耆街道)が東西に通る交通の要衝であったが、江戸時代、由良川の水利と交通の便を利用し、由良宿内に年貢米2200俵格納可能な13棟の藩蔵が建設され、由良は港町、宿場町として大きく発展した。今でも、大きな屋敷が古い町並みに残り、かつての繁栄をしのばせる。
北栄町は、海岸沿いに砂丘地域が多く、大山の噴火による黒ボク地帯が広がり、また、日本海からの強風など、農業生産への条件は不利であるが、これを県内でも有数の農業地帯に変え、梨、葉たばこ、長芋、ラッキョウ、芝などが栽培されている。砂丘地域は、灌漑(かんがい)・飛砂など、多くの問題を抱え、農地利用は難しかったが、江戸時代から本格的な開拓に着手し、黒松による砂防造林、灌漑設備の整備など、不断の努力により、今日の豊穣(ほうじょう)な大地となった。
黒ボク地帯では、スイカを中心としたハウス栽培が行われ、ダムからのかん水により、周年栽培が行われている。「北条ワイン」は、努力の成果の一つである。砂丘地域のため水はけがよく、昼夜の温度差も大きく、良質なブドウを栽培するためには最適である。このブドウを使って、ブドウ栽培からワイン造りまで一貫して取り組み、個性豊かな「北条ワイン」を出荷している。
出身者は人気漫画家
由良には、「青山剛昌ふるさと館」があり、まちづくりに活用している。これは、07(平成19)年に開館したマンガ・アニメミュージアムで、「名探偵コナン」の原作者として知られる由良出身の青山剛昌の資料館である。JR由良駅から青山剛昌ふるさと館までの1.4キロの「コナン通り」には、コナンのブロンズ像などが点在しており、いろいろな場所で「名探偵コナン」のキャラクターたちに出会える。JR由良駅は、「コナン駅」の愛称で親しまれている。
北栄町では、日本海からの強風という地域特性を生かし、風力発電による自然エネルギーによって地域再生を官民一体となって取り組んでいる。9基の風車は、市町村直営では日本最大級である。現在、既存の設備の更新時期を迎え、環境、景観、健康被害、採算性等から、更新の是非について、町議会で議論が白熱している。
地方農村地域では、過疎化、少子高齢化、耕作放棄地等の問題が山積みである。一方、大都市も、保育、孤独死等の問題が生じている。また、感染症、テロ、大規模災害の危険等、大都市への人口集中にはリスクを伴う。情報通信の発達により、必ずしも事務所への通勤、都市居住の必然性がなくなってきている現在では、社会構造の転換のメリットは大きい。行政機能、事務所機能等の都市機能の地方分散を積極的に推し進め、人口の地方回帰を図り、国土の均衡ある発展を図るべきと考える。
北栄町では、出身者をまちづくりに活用し、不毛地帯を有力な農業地域に生まれ変わらせている。地方では、当分の間、このような地道な努力を積み重ね、社会構造の変化に備え、厳しい状況を耐え抜くしかない。
(鳥取支所、不動産鑑定士・向井伸)


























