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スタンダード会員限定この地上において今 住まいが未来を語り始めた ◇20 住宅評論家 本多信博 コロナがくれた好機 なんのための人生かを考える

住宅新報 2020年12月8日 号 15面

連載: この地上において今― 住まいが未来を語り始めた

総合
『住む』より『楽しむ』をブランドスローガンにしているアールシーコアのBESSの家が、累積で2万棟に到達した。それを記念して行われた二木浩三社長(右)へのインタビューで、同社長は〝楽しむ〟という感情は人生にとって最高のもの。だからそれを引き出す仕掛けが住まいには必要だと語る

『住む』より『楽しむ』をブランドスローガンにしているアールシーコアのBESSの家が、累積で2万棟に到達した。それを記念して行われた二木浩三社長(右)へのインタビューで、同社長は〝楽しむ〟という感情は人生にとって最高のもの。だからそれを引き出す仕掛けが住まいには必要だと語る

 人はなんのためにこの世に生まれて来るのか。人間以外の動物はそんなことは考えない、と人間は思っている。しかし、本当にそうだろうか。ライオンや象や、空を飛ぶ鳥にも、水の中を泳ぐ魚にもなったことのない人間に何が分かるというのだろう。人間が思いもしない方法で、同じようなことを考え、悩んでいるかもしれないではないか。

 人間はそろそろ、その偉大な頭脳で考えることに疑いを持つべきだし、出した答えに謙虚にもならなければならない。コロナは人が仕事とは何か、どういう働き方が自分にふさわしいか。生活の基盤としての住まいはどうあるべきかなどを改めて考え直すキッカケとなった。哲学者や人類学者の中には、今回のパンデミックは人類の歴史を変えるほどのパラダイムの転換をもたらす可能性があると指摘する人もいる。

 つまり、コロナはごく普通の市井の人には考えること自体を、モノを考えることを仕事にしている人には新たな思考の種を植え付けるキッカケとなっている。これこそが、人間があらゆる動物(ウイルスは動物ではないが)の頂点にいるわけではないことの証(あかし)ではないだろうか。

 人間は考えるために生まれてきた,と考えるのも洒落ている。考えることをしないのがロボットだ。自ら考えることを止め、プログラム通りに動けば、効率がアップすることは当たり前だろう。

 東急住宅リースは17年にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を決定した。RPAはパソコンの中で作業をするロボットのことだ。つまり社員が毎日パソコンでやっている定型的な作業をソフトウェア型のロボットが代行してくれる。同社ではその効率性はすさまじく、現時点で年間の事務作業削減効果は約4万7000時間にも及び、これは派遣社員の約25人分の仕事量に匹敵するという。

 東急住宅リースに限らず、不動産業界のデジタル化・ロボット化は大手を中心に急速に進み始めている。そこで最も大事なことは、そうして生み出された時間を何に使うかである。もし、それを更なる利益拡大に差し向けるならば、普通の人間はいよいよものを考えない動物になってしまう。

 資本主義の矛盾は有限の地球上で無限の利益を追い求めようとすることだ。もっとも近年は利益拡大の舞台を宇宙にまで広げようとしている国々もある。全日本不動産協会の顧問で、元国土交通事務次官の毛利信二氏は「デジタル化で生み出された時間はそこで働く人の精神的負担を軽くしたり、新たな価値創造のために使うべきではないか」と指摘する。

 人間は幸福になろうとして生きている。これは間違いない。では幸福とは何か。実はこの根本のところさえも人間はあまり考えなくなりつつある。もっとも考えることで人間は幸せになれるわけではない。論語に、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という言葉がある。楽しむことが人生における最高の価値であるという意味だが、その理由は楽しむとは行動に移すことになるからだと考えられる。

 〝『住む』より『楽しむ』〟をブランドスローガンにしているアールシーコアの二木浩三社長はこう話す。

 「人間には7つの感情(喜怒哀楽愛悪欲)があるが、その中でも〝楽〟は外に出したくなるプラスの感情で、しかも他者と共に行動に移したくなる最高の次元にある」

 怒り・哀しみ・憎しみなどマイナスの感情はときに人を破滅にさえ追い込んでしまう。人はこの世に生きるために生まれてくる、そして生きるとは他者に何かを働きかけることだとすれば、楽しむことが人生にとって最高の次元にある価値と言ってもいいのではないか。二木氏は、『住む』より『楽しむ』をひと言で表現するなら、「それは〝楽しんだもん勝ち〟ということかな」と笑う。

 楽しむとは何かを考えることが人生を考えることにつながるなら、コロナ下で家にいる時間を問い直す人が増えている今だからこそ、『住む』より『楽しむ』というスローガンの意味深さが改めて伝わってくる。 (住宅新報顧問)

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