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プレミアム会員限定知って得する建物の豆知識 300 建築の諺と警句 現代でも役に立つ言葉たち

住宅新報 2020年11月24日 号 8面

連載: 知って得する建物の豆知識

総合
山茶花の木

山茶花の木

 今回は久しぶりに建築にまつわる諺(ことわざ)や警句についてお届けします。

 劇場や舞台が完成して、最初の興行を「こけら落とし」と言います。「こけら」とは木っ端やカンナ屑のことで、屋根に溜まっている「こけら」を最後に払い落として建物が完成とすることから転じて、最初の興行を「こけら落とし」と呼ぶようになりました。しかし、「こけら落とし」に失敗すると「沽券にかかわる」と言います。沽券とは江戸時代の土地、家屋などを売買する際に、売主から買主に与える売り渡し証文、「町屋敷売買証文」を指しました。これは税金を納める町屋敷の所有者を意味しており、面目がつぶれるようなことを招来すると「沽券にかかわる」と言ったのです。

 まあ、そういう事態になるのは、誰か「ボンクラ」が間に入っていたのかもしれません。「ボンクラ」とは、お盆の頃に蔵の漆喰を塗っても乾きが悪いことから「役に立たないやつ」のことをボンクラと呼んだという説と、漢字で書くと「盆暗」となることから、「盆」は「賭博場」のことを意味し、「暗」は勝負に負けることを指し、賭け事で負けてばかりの人を「ボンクラ」と呼ぶようになったという説があります。

 こうした、ボンクラの家は「門前雀羅(じゃくら)を張る」と言うようです。「雀羅」とはスズメを捕獲する霞網のようなもので「門前雀羅を張る」とは、訪れてくる人が少なく、寂れて閑散としていることの喩えに使われます。「閑古鳥が鳴く」と同じ意味合いです。そして最後には「棟折れて垂木崩れる」となります。棟木が折れると雨水が垂木を腐らせるようになり、挙げ句の果てには屋根全体が崩落することから、組織のトップがダメになると、部下もそろってダメになってしまうことの喩えです。

 こういうトップは「松の柱も三年」とも言われるかもしれません。松の木は腐りやすく、通常柱には使われませんが、それでも三年は持つことから、役には立たない人物でも当分の間は使える、と言うことの喩えです。また「朽木(きゅうぼく)は雕(え)るべからず」と言う警句もあります。朽ちた木に彫刻を施すことはできないとことから、やる気のない者に、いくら教育しても無駄という意味です。

 ところで、こうしたダメトップにも関わらず、下で努力する人を「縁の下の力持ち」と言いますが、正しい意味は「人の見えないところで、いたずらに努力すること」だそうで「無駄な努力をする」という意味だそうです。

 さて、お話変わって大工の世界では、「一樫二ぐみ三かたし」と言います。「かたし」とは山茶花(さざんか)のことで、「一樫二ぐみ三かたし」は用材としての堅さを述べたものです。一般に樫材(オーク)は堅すぎるだけでなく、変形率が大きすぎて、木組みのしっかりしたフローリングや建具以外にはあまり使われません。ぐみ(茱萸)の木は小径木なので、これも建築用材には使われませんが、ハンマーの柄などに使われます。山茶花も建築用材としてよりも木槌や木魚、精密加工ができることから鋳物の木型などに使われます。

 用材で言えば「材大なれば用を為し難し」という諺があります。これは、材木が大きすぎると加工しにくく、使いにくいことから、あまりに優れたり、意識の高すぎる人物は世の中に受け入れられにくいということです。

 そして最後は「寸を曲げて尺を伸ぶ」です。これは一寸の小さなものを更に短く曲げ縮め、一尺の大きなものをさらに長く伸ばすという意味から、小事を犠牲にして、大きな利益を得ることの喩えです。 (建築家・中村義平二)

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