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スタンダード会員限定点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第27回 循環型社会と産業創出に挑む 熊本県小国町 SDGsに即した地域資源活用

住宅新報 2020年11月17日 号 16面

連載: 点検 不動産利活用

総合
  • 大分県境にある涌蓋山(わいたさん)周辺は日本有数の地熱地帯

    1 / 2大分県境にある涌蓋山(わいたさん)周辺は日本有数の地熱地帯

  • 地熱や森林の研究拠点として活用される旧西里小学校校舎

    2 / 2地熱や森林の研究拠点として活用される旧西里小学校校舎

 小国町は熊本県の最北端に位置し、総面積は約137平方キロ、東西北部が大分県に隣接し、面積の約75%を山林が占める農山村地域である。林業の歴史は古く、肥後藩令によって各戸25本の杉の挿し木を行ったことから始まった。平均気温が低く、冷涼な気候が良質な杉の育成に適していたため小国杉の名称で幅広く利用されている。

 観光業に関しては、町内に2つの温泉郷(わいた温泉郷、杖立温泉)と温泉施設が30カ所以上点在し、南部に隣接する南小国町(全国的に有名な黒川温泉が所在)と共に古くからの温泉街として知られている。しかし、少子高齢化が進んでおり、人口は20(令和2)年10月1日現在約6900人、移住定住者も少なく減少傾向である。地価は弱含みで、家賃は空き家バンクの賃貸戸建てで3~5万円前後、共同住宅はファミリー向け(2LDK)で4.5~6万円前後、単身者向けで3.5~4.5万円前後である。

 近年、政府、自治体、企業などにおいて、15(平成27)年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に関する様々な取り組みが注目されているが、SDGs未来都市構想の中で、自治体によるSDGs達成に向けた優れた取り組みを提案したとして、小国町は16(平成28)年に「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定、認定されている。

 日本では、SDGsの理念が発表される以前より持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりのため環境未来都市構想が進められていたが、同構想の中の「環境モデル都市」にも同町は選定されている。環境モデル都市とは、我が国が目指すべき低炭素社会の姿を具体的に分かりやすく示すために、低炭素社会に向け高い目標を掲げて先駆的な取り組みにチャレンジしている都市である。

新電力会社を設立

 同町の主な取り組みとして、地域循環資源を有効活用すべく、町が出資して新電力会社(ネイチャーエナジー小国(株))を設立し、電力小売り事業に参入し、豊富にある地熱、風力、太陽光等の再生可能エネルギーを活用したエネルギーの地産地消と新電力会社への契約変更により、町全体での電気料金の削減を推進している。そのほか、地球温暖化の現状、課題について子供たちへの環境教育の実施や森林資源の有効活用等が挙げられる。

 SDGsの目標達成は2030年であるが、小国町においては更に2050年を目指し新しい目標として「地域循環共生圏」づくりを発表し、目指す地域の姿として「地域資源を生かした循環型の社会と産業を創出し、将来にわたって持続可能な町」を掲げる。事業のタネとしては、地熱を利用したスマートアグリビジネス事業(カカオ豆生産の実証実験)、グリーンスローモビリティの社会実装の検討、ツーリズム(グリーン、医療、教育)によるSDGs(地域循環共生圏づくり)の普及展開が挙げられる。

 このようなSDGsの理念に即した町固有の資源を利用したまちづくりは、地元住民だけでなく、小国町外の協力者や町を訪れる人たちの愛郷心を醸成し、老若男女を問わず住民の地域コミュニティに対する誇りを育む。すべての人にとってより良い社会の実現に向けて、2030年、2050年を目指した小国町のまちづくりに期待しようではないか。(熊本支所、不動産鑑定士・中島伸一)

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