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プレミアム会員限定知って得する建物の豆知識 298 リバークルーズ 力の入った建築物を見る

住宅新報 2020年10月27日 号 9面

連載: 知って得する建物の豆知識

総合
終点のロンドン橋

終点のロンドン橋

 大都市の要件は、そこが観光都市であることですが、そういう意味では東京や大阪は消費の中心ではあっても、観光都市とは言い難いかも知れません。というのも、これは私の尺度で異論もあると思いますが、リバークルーズが充実しているかどうかが観光都市か否かの分かれ目だと考えるからです。

 例えば大都市であるロンドンやパリはテムズ河、セーヌ河が都市の中心を流れ、街並みや景観を楽しめるリバークルーズが非常に充実しています。短時間コースから豪華なディナー付きの長時間コースまで、プログラムも豊富。他の中規模程度の西欧都市、例えばベルリンやフランクフルト、コペンハーゲン、アムステルダムなども充実したリバークルーズが楽しめます。

 私は初めて訪れる都市に行ったときは、まずは〝くだらない〟とも思えるようなチープな市内観光バスに乗って街の概要を把握します。これはチープであればあるほど、メインのスポットしか回りませんので、イメージ掌握には適しています。次に塔や丘などできるだけ高い場所に登り、街のシンボルとなる建物や公園の位置を確認して自分なりの街のイメージをつかみ、最後、リバークルーズに乗船して街の軸となる河と景観の一致をはかり、その街のイメージを完成させます。多くの西欧都市は河を中心軸として生まれ発展していますので、リバークルーズはその街を理解するには非常に有効な手段なのです。

 お勧めはロンドンのテムズ河、パリのセーヌ河、アムステルダムの運河クルーズなどです。知り合いから「ロンドンの建築を見たいのですが、お勧めは?」と聞かれることがありますが、まずはテムズ河のクルーズをお勧めします。

 このクルーズは乗船する場所がポイントです。そのためには、バンクと呼ばれる金融街から新交通システム「ドックランズ・ライト・レイルウェイ」に乗ってカナリーワーフという、東京でいうと西新宿のようなオフィスビル密集地域に移動します。かつてはイーストロンドンと呼ばれた貧民窟の外れでしたが、現在は近代的な商業建築が立ち並んだビジネス街です。

 ここから少し歩いた先にあるDocklandsという場所に向かいます。旧港湾荷役用岸壁で一時は非常に栄えた場所です。ここにアイランドガーデンという小さな公園があり、その脇に古いガラスドームの建物があります。ここから対岸にある、世界標準時でおなじみのグリニッジへ川底に敷設されたフット・トンネル(歩行用トンネル・1902年)を通って渡ります。古いガラスドームの建物の中には大きな木造のエレベーターがあり、ギシギシ音を立てながら川底に着くと、長いトンネルが待っています。このトンネルは鋳物の円筒ユニットをボルト接続したもので、これだけでも一見の価値があります。ちなみにテムズ河には27のフット・トンネルがあります。

 10分ほど歩くと対岸に着き、地上に出ると目の前にはウィスキーでお馴染みの帆船「カティー・サーク号」が停泊しています。付近にあるグリニッジ天文台や海洋博物館の探訪も良いのですが、カティー・サーク号の脇からクルーズ船に乗り、約1時間かけてロンドン橋を目指します。

 古い産業施設からビクトリアンスタイルの建築物、ミッドセンチュリー、ポストモダン、現代建築まで次から次へと航路の左右に広がります。建築に興味のない客はビールを飲み、ぼんやりしているだけですが、我々には興味の尽きない景観が続きます。今回の例はテムズ河でしたが、他の都市も河沿いには力の入った建築物が建ち並んでいます。 (建築家・中村義平二)

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